新学期の長文集の小学1・2・3年生の文章を中心に、ルビをふっていく予定です。
ルビをふる理由は、漢字を読み間違える生徒が多いためです。
もともと長文は、ルビなしの文章を、お父さんお母さんに読み方を聞きながら読むことを目的にして作られていました。ルビなしで読んでいくと、漢字を漢字のまま読む力がつきます。湯川秀樹が、小学校低学年のときに論語の素読をしたときの読み方も同じでした。
しかし、現実に、多忙なご両親が、毎日長文の音読を聞き、そのつど読み方を教えるということは難しい面もあるようです。このため、中学生になると、読み方を間違えたまま長文を読んでいる生徒がかなりいました。
そこで、印刷物の長文はルビ付きにして、ルビなしの長文はウェブに掲載するようにしました。
ルビなしで読む力をつけるという考えは、いろいろな勉強の仕方に共通します。
例えば、音楽の音符を読むときに、「ドレミ」などの文字を書いてしまう人は、なかなか音符を読めるようになりません。
英語の文章を読むときに、日本文のようにうしろから戻って読む読み方をしていると、なかなか英語の文章に慣れません。(例えば、I can’t speak English.という英文の読み方は、「私は、英語を話すことができない」と訳しながら読むのではなく、「私は、できない、話すことを、英語を」という調子で読むということです)
海辺で暮らしている人は、スイミングスクールなどに通わなくても自然に泳げるようになります。
難しい文章に接していると、解説を聞かなくても自然に大体の意味がつかめるようになります。
勉強の基本は、習うより慣れろで、その能率を高めるために知的な学習があります。
ルビ付きの長文で読み方を覚えたあとは、ぜひウェブのルビなしの長文にも挑戦してみてください。
さて、このルビの歴史です。
戦前までの新聞は、ほとんどルビつきで印刷されていました。これは、国民教育という観点から、国民がすべて必要な文章を読めるようにするという政策の一環でした。
しかし、戦後、日本が侵略戦争の道に進んだのは、正しい世論が形成されなかったためで、それは日本語に難しい漢字がありすぎたためだという議論が出てきました。当用漢字(今の常用漢字)は、このような議論の中で制定されました。
当時は更に過激に、日本語をローマ字にしようとかひらがなだけにしようとかいう意見もあったようです。中には、日本語をやめてエスペラント語やフランス語を国語にしようという人もいたぐらいですから、いかに当用漢字が熱狂的な空気の中で制定されたかがわかります。(「エスペラント語や」の部分は元の資料未確認のため削除します)
当用漢字の制定と合わせて、ルビをふらなければ読めないような漢字を使うのはやめようという考えが出てきました。これに、細かいルビの字は目に悪いという意見も加わりました。
その結果、戦後の新聞は、当用漢字のみでルビなしという形でスタートしました。
しかし、このルビなしの影響は、意外なところに現れました。これまで、ルビがあれば大人の読む文章も平気で読んでいた子供たちが、子供向けに書かれた優しい文章しか読めなくなったのです。日本人の総体的な読解力低下には、このことが一つの大きな原因となっています。
現在、ルビを復活させようという声が出ているのは、以上のような背景があるからです。
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コメント欄
>中には、日本語をやめてエスペラント語やフランス語を国語にしようという人もいたぐらいですから
フランス語を採用しようと提案した人は比較的知られていますが、「日本語をやめてエスペラントを国語にしようとした人」は私は思い浮かびません。具体的なことをご存知でしたらお教えください。
エスペラント語を国語にという議論を読んだことがある気がしたのですが、元の資料がわかりません。
不正確なので、この部分は訂正しておきます。
ご指摘ありがとうございました。
エスペラントは「国際共通語」ですので、日本国内で日本語の使用をやめてエスペラントを国語に採用しようという提案をエスペランティストがすることは考えられません。ただ、エスペラントを知らない人がそういう提案をしたことがもしかしてあったかもしれず、そのような事例をご存知なのかと考えて質問しました。
ご訂正、ありがとうございます。真摯なご姿勢に敬意を表するものです。
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