ところで、受験に合格するための作文は、少し性格が違います。根っこの部分を充実させることはもちろん大切ですが、受験までの数ヶ月で実力をつけるというわけにはいきません。
受験のための作文は、今既にある実力の範囲で、できるだけ合格できそうな作文を書くことにあります。(と、ここまでが前回の話)
合格を目的として作文を書く場合も、言葉の森の独自の指導法が生きてきます。言葉の森の指導の特徴は、作文を書く前に事前の指導をする点です。どういう構成で、どういう点に注意して書けばいいかということを事前に指導できるので、子供たちは迷わずに書き出すことができます。
そして、普段からこのように構成的に書く練習をしていると、試験の本番でも自然に全体の流れを意識して書くことができるようになります。
作文を書く場合、ほとんどの人は、まず書き出して、あとは考えながら書き進めるという形で書いていきます。自分の趣味で文章を書く場合は、これでいいのですが、受験という限られた時間で与えられた課題で書くときは、書きながら考えるというやり方では出来不出来の差が大きくなりすぎます。
全体の構成を意識して書くと、常にある一定の文章が書けるようになります。つまり、全体の構成を考えて書く書き方は、上手に書くための条件ではなく、下手に書かないための条件なのです。
そして、この下手に書かない書き方ができたら、あとは、実例と表現の部分で上手に書く練習をしていきます。
作文というものを、構成、題材、表現、主題、表記という5つの面から見た場合、構成は、意識的に構成を考えて書くことによって力がつきます。言葉の森で勉強している生徒は、構成のしっかりした作文を書くという特徴があります。
題材(実例)と表現は、偶然に左右されやすいものです。だれでも、たくさん書く中には、必ずいい実例といい表現が出てきます。その実例と表現を自分の作文の武器としていつでも使えるようにしておきます。合格する作文を書く場合、この実例と表現の練習をすることが最も重要です。
主題(意見・感想)は、人による差がそれほど大きくはありません。人間の考えることはだれでの同じようなもので、特にユニークな意見を書こうと無理をすると大体失敗します。自分が普通に考える意見や感想を書き、そのかわり、実例と表現の部分で個性を出していくというのが上手な作文を書くコツです。
表記というのは、「漢字を使って書く」「誤字がないようにする」「常体か敬体に統一して書く」「段落をつける」などのことです。誤字をなくす練習は、かなり時間がかかります。しかも、誤字は勘違いして覚えているというケースがほとんどですから、実際に作文を書く中で誤字を発見するというやり方しかありません。そのためにも、作文の練習では、まず書いてみるということが大事です。
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