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新たな知のパラダイム(その2)  2011年1月7日  No.1117
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 知のパラダイムとは、何でしょうか。それは考え方の枠組みです。

 デカルトによって考え出された、物事を分けて考えるというヨーロッパ文化の枠組みは、その後、ニュートンの力学、ルソーの社会契約論、そして、産業革命の技術などを生み出しました。

 ある枠組みを持った文化は、他の弱い枠組みしか持たない文化よりも、強力な影響力を持っています。ヨーロッパが、アジアやアフリカや南アメリカを植民地にできたのは、ヨーロッパ人が優れていたからではなく、ヨーロッパに新しい文化の枠組みが生まれ、それが産業力と軍事力に結びつくことができたからです。

 枠組みが力を生み出すということを身近な例でいうと、次のようなことになります。

 経営者の2世として仕事をする新入社員は、普通の新入社員に比べて仕事に対する吸収力が違うと言われています。仕事に取り組むうえで何か問題点があっても、それを単なる不平不満としてとらえるのではなく、自分の将来に生かすという観点でとらえることができるからです。能力よりも、枠組みの違いが大きな差を生み出すのです。

 同様に、大学で学ぶ学生の場合も、その大学で学んだ知識を自分の国の発展に役立てようと考える途上国の学生と、単にその大学で学んだことを就職に生かそうと考える先進国の学生とでは、学問に対する吸収力が違ってきます。これも、能力ではなく、勉強に対する考え方の違いが大きな差となっている例です。

 また、本を読むときでも、自分で買って読む本と、図書館から借りて読む本とでは、読書から得るものの深さが違ってきます。これも、本を読むときの自分の考え方の枠組みが異なっているからです。

 以上の三つの例は、単に、目的があるから意欲がわくということなのではありません。目的があるからではなく、ある物事が、大きな枠組みの中で他の物事に媒介されているから、その物事に対する確信が強固になるということです。

 同様のことは、宗教や社会主義などの思想についても言えます。単にある知識を持っているというのではなく、全体の枠組みの中に位置づけられた知識を持っているために、その知識に対する確信が強固になり、その結果、その考え方が、他の考え方よりも大きな影響力を持てるようになるということなのです。(つづく)

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