言葉の森は、日本語の作文教室なので、当然日本文化のよさということを勉強の中で子供たちに伝えていきたいと思っています。
日本語を大切にするとともに、作文の課題にも、日本の季節の行事などが盛り込まれるようにしています。中高生の書く小論文の社会実例でも、伝記や歴史や昔話の実例で、日本文化の伝統を現代に生かすような工夫をしています。
日本文化は、世界の中でも特殊な文化です。そのために、日本の国語のテスト問題には、よく欧米と比較した日本文化というジャンルが出てきます。これは、日本で国語の勉強をしているとあたりまえのように思われがちですが、実は比較文化論が国語の問題の主要なジャンルになっているというのは、日本だけの特色なのです。
そういう不思議な文化を持った日本の、その日本らしさの本質が実はまだよくわかっていません。「日本とは何か」という問いに対してよく引用されるものが、本居宣長の「敷島の大和心を人問はば朝日にほふ山桜花」という歌です。しかし、これを見て、そうだなあと納得できるのは日本人だけでしょう。世界に普遍的に通用する日本論はまだ存在していないのです。
しかし、今、日本は大きな曲がり角に来ています。少子化と高齢化の進行によって、地方の街はどんどんさびれています。それに伴い、地域の商店街も縮小し、地域の行事も規模の大きいものは次第に行われなくなっています。また、国際的にも工業生産の中心が新興国に移っていくことから、日本の町工場は衰退に向かっています。
このような中で、海外からの移民の増加や、逆に日本の工場の海外進出など、これまでの日本文化の土台となっていたものが、次々におびやかされているというのが現代の状況です。日本というと、一昔前までは、「ものづくりの日本」「教育立国の日本」というような言葉が思い浮かびましたが、今は単純にそのようなことは言えなくなっています。現代は、これまでの日本を支えていた前提が崩れ、日本とは何かという共通の理念がなくなりつつある時代なのです。
ところが、ここで、日本らしさの根本を民族的なものに求めることは、日本の将来をますます出口のない道に向かわせることになります。日本には、既に、日本人ではないが、日本が好きで日本をよりよくしていこうと考えて仕事をしている多くの人がいます。それらの人たちが賛同できるような日本らしさを考えていかなければなりません。
今必要なのは、未来に向けて日本というものを抽象化していくことです。それが、日本を世界に通用する普遍的なものにしていく道です。日本を守り発展させるというときに、日本の何を守り、何を発展させるのかということをまず考えていく必要があるのです。
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