これまでの全記事
生きた知識が作文を上手にする  2007年4月6日  No.137
ホームページの記事は→137
 知識には、生きた知識と死んだ知識があります。
 受験期になると、よく時事問題の参考書が店頭に並びます。これらの参考書を読んで身につく知識は、クイズで聞かれたときに答えるのには向いていますが、生きた知識ではありません。その証拠に、いくらこれらの時事的な話題を参考書で覚えても、作文の中にそれらの知識をうまく生かすことはまずできません。
 小学生の場合の生きた知識は、主に大人との会話によって身につきます。だから、時事問題を生きた知識として身につけるためには、ニュースなどを話題にして、お父さんやお母さんが自分の考えを話してあげることが役に立ちます。お父さんやお母さんの知識は、参考書よりも精確ではないかもしれませんが、子供には身近な人の実感のこもった意見の方がずっと心に残るのです。
 知識のこのような仕組みを考えると、小学生の間は、子供を勉強部屋でひとりで勉強させるよりも、家族の中で勉強させた方が、より効果的な学習ができるということがわかります。長文音読なども、親が料理を作ったり新聞を読んだりしている横で子供が読むようにすれば、その長文に関する話題なども自然に生まれてきます。
 同じようなことが、高校生で書く小論文にも言えます。学校の勉強はしっかりやっているはずなのに、そこで学んだ知識を小論文にうまく生かせる人はほとんどいません。世界史や日本史などは、実例の宝庫のように思えますが、意外と小論文の実例としては使えないのです。
 では、どういう実例が使えるかというと、その人が読書の中で読んで身につけた知識です。だから、本をよく読んでいる生徒は、的確な実例を書くことができますが、本を読まずに勉強的な知識だけを詰め込んでいる生徒は、ありきたりの実例しか書けません。
 ところが、更に言うと、同じ読書でも、入門書や概論書のように知識が上手に整理されているものは、やはり実例にうまく生かすことができません。よく「○○入門」という書名の本がありますが、そういう本は、実は意外と生きた知識にはならないのです。
 それでは、どういう本が生きた知識になるかというと、それは原典です。どの分野でも、古典と呼ばれる定評のある本があります。書かれている内容が古くなっているように見えても、そこには、作者の生きた感情が流れています。それが、読み手にとって生きた知識につながるのです。

233-0015 横浜市港南区日限山4-4-9言葉の森オンラインスクール 電話045-353-9061
 
 同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。


 コメント欄

森川林 20070409  
 留守番電話に、「精確」は「正確」の間違いではないかというご質問がありました。
 正確……正しいこと
 精確……精(くわ)しいこと
という使い分けですので、どちらでもいいと思います。
 ニュアンスとしては、「くわしくない」方です。
コメントフォーム

生きた知識が作文を上手にする 森川林 20070406 に対するコメント

▽コメントはここにお書きください。 お名前(ペンネーム):

 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。


 低学年から学力の基礎を作る
幼長、小1、小2、小3の基礎学力をひとつの講座で学ぶ。
読書の習慣、国語算数の勉強、暗唱の学習、創造発表の練習をオンラインで。


受講案内の郵送(無料)をご希望の方は、こちらをごらんください。
(広告規定に基づく表示:受講案内の郵送を希望される方はご住所お名前などの送信が必要です)

電話通信の無料体験学習をご希望の方は、こちらをごらんください。
(無料体験学習をお申し込みの方に、勉強に役立つ小冊子をお送りします。)

Online作文教室 言葉の森 「特定商取引に関する法律」に基づく表示」 「プライバシーポリシー」