作文の勉強は、いろいろな勉強の中でいちばん難しいと言われています。なぜかというと、勉強の主体が子供の側にあるからです。
作文以外の勉強では、先生がその教科の知識や方法を子供たちに伝えるという方法ですから、先生のペースで教育ができます。教えたものをテストでチェックして再び教えなおすという形なので、教え方の上手下手はありますが、だれがやっても同じように勉強を進めることができます。
しかし、作文は勉強の主体が子供なので、例えば子供が作文を書けないというときに、どうい指導するのかが難しいのです(その方法はありますが)。感想文の宿題がよく出されるのは、感想文の勉強をもし一斉授業でやるとしたら、書けない子の対応ができないからです。だから、宿題として家庭に任せてしまうのです。
また、上手な作文を書ける子がいた場合、そのあとの指導をどうするかというのも難しいところです。もっと上手な書き方を教えるということは、通常はできません。子供の持っている文章の実力は、少し教えたぐらいではほとんど変わらないのです。
だから、作文の勉強は、作文を教えることによって行うのではありません。世間の多くの作文指導は、この点を誤解しています。著名なタレント評論家の顔を前面に出したカラフルな作文通信教育講座の広告などを見ると、一見それで作文の勉強ができるような気がしますが、そういうことはありません。作文の勉強は、読む力と考える力をつける中で初めて実力がついてくるのです。
言葉の森の通学教室では、今、中学生も含めてほとんどの子が、毎週読んでいる本を持ってきます。読書が子供たちの生活の中に位置づけられているのです。そして、小学生の子のほとんどが、毎週、300字から900字の長文を暗唱してきます。これも、家庭で暗唱する生活ができているからです。更に、ほとんどの子が、作文に書く課題をもとに、お父さんやお母さんに取材をしてきます。こういう積み重ねがあって初めて作文の実力が向上していきます。
作文の上だけでにぎやかに赤ペン添削をしても力はつきません。もし優れた赤ペン添削で、作文が上手になるのなら、日本中の子供たちのほとんどが作文が上手になっているでしょう。ところが、そうならないのは、作文力が読む勉強と考える勉強によって育っていくという仕組みを多くの人が気づいていないからです。上手な子の作文だけ集めた文集を作ってみんなに配るなどというのは、指導に自信がないことの裏返しです。作文は、読む勉強と考える勉強に基礎を置くことによって、初めて実力のつく楽しい勉強に変わっていくのです。
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