これからの世の中を考えると、さまざまな不安が思い浮かびますが、不安を前提として考えるのではなく、希望を前提として考えることが大事です。
なぜなら、人類の生産力の発展をとってみても、人間の精神性の向上をとってみても、自由な情報の広がりをとってみても、新しい科学技術の発達をとってみても、どれもよい条件が年々増えていることがわかるからです。
悪い社会が来ることを前提として固く萎縮していれば、悪い社会は加速してやってきます。
よい社会が来ることを前提として前向きの行動をとっていれば、よい社会もまた加速してやってきます。
よい社会を加速させる上で大きく役立つのが、創造性を育てる教育です。
基礎学力は寺子屋方式で身につけ、余裕のできた時間を創造性の開発に向けるという大きな方向が、これからの教育に求められてきます。
創造性を育てる要になるのが、日本人にとっては日本語です。
日本語による音読、暗唱、対話、読書、思索、作文が、これからの創造性を育てる学力の中心になってきます。
私たちの意識は、まだ人間の幸福を勝ち負けで考えているところがあります。
他人よりもよい生活をして、のんびり楽に暮らしたい、という勝者の平穏のような状態が、人生の漠然とした目標になっているのです。
しかし、勝ち負けを前提にした幸福は相対的なもので、すぐに飽和状態がやってきます。
生活の心配なく、毎日砂浜に寝転んで、飲んだり食べたり遊んだりしていることが永続的な幸福になるかというと、そういうことはありません。
真の幸福は、自分の好きなことをすると同時に、それが創造的なものであり、結果として社会に貢献することになるということが条件になります。
そして、人間の社会は、すべての人が自分の好きなことを、生活の心配なく楽しくできて、毎日が創造的であるという生活をする方向に向かっています。
それを、遠い未来のあてのない夢物語と考えるのではなく、この現実の人生の中で、できるだけその社会に近づけていくことが大切なのだと思います。