○がつけば誰でもうれしいものです。だから、子供はできるだけ○になろうとします。
しかし、自学自習で自分で採点するスタイルの勉強では、×がたくさんついた方がよい勉強なのです。
学校や塾のテストで、子供が悪い点を取ってきたとき、ほとんどの親は顔をしかめると思います。逆に、全部○のテストを持ってきたら、にっこり笑って子供を褒めると思います。
なぜ○がうれしく、×がうれしくないかというと、評価の基準を過去に置いているからです。その子のやったこれまでのことが正しかったから○になったと考えるからです。
しかし、本当に大事な基準は未来にあります。これから、その子がどういう勉強をしていくべきか考えるのが未来の基準です。
未来に基準を置けば、○は意味のない評価で、×こそが意味のある評価になります。
だから、子供の勉強で×がついたら、親はそれを喜ばないといけないのです(難しいと思いますが(笑))。そして、
「×がついた分だけ、自分がこれから賢くなるんだから、×はたくさんついた方がいいんだよ」
と、子供に言ってあげるのです。
こういう見方や考え方は、単に勉強のコツにとどまらず、子供の人生観にも影響を与えます。
それは、目先の利益にこだわらず、より大きな社会的な利益を目指すという考えに結びついていくのです。
昔、私(森川林)は、自分の子供が勉強しているときに、よく、
「わからない問題はあてずっぽうで答えを書いて○になるよりも、空欄にして×をもらった方がいいんだよ」
と教えていました。
その子は、中学生のとき、塾にはどこも行っていなかったのですが、友達のみんなが近くの塾に行くので、どんなところか知りたいと思ったらしく、夏期講習だけ試しに塾に行くことにしました。
ところが、そこで、塾の先生が、
「テストで時間がないときは、何でもいいから答えを書いておけば○になることもある」
と正反対のことを教えてくれたそうです。
それで、そういう塾での勉強を見限ったのか、結局塾には行かずに自分で勉強していました。
小さな得を求めていては、人間は成長しません。
○に満足するのが小さな得だとしたら、大きな得は×を出発点とするところにあるのです。