これからの勉強は、知識力よりも思考力が大事になると言われています。この思考力が、国語と算数では意味が違うのです。
まず国語の思考力ですが、それは語彙力と思想力と言ってもいいものです。平面的に見える現象を立体的な言葉で理解するというのが語彙力と思想力と呼ぶものです。例えば、嘘は悪いことという平面的な考え方に対して、嘘も方便という諺は例外があり得るという立体的な見方を与えます。
この立体的な見方の程度が更に高まったものが、学問的な考え方です。哲学や経済学では、その用語を知っていることによって、目の前にある現象をより深く理解することができるという面があります。
学問上の古典というものは、何らかの意味で新しいパラダイムを生み出した結果古典となったものです。だから古典を読むことによって、物の見方や考え方が深まるということがあるのです。
これに対して教科書的なもの、つまり入門書や概論書などは、最終的な学問の結果だけを整理した形になっていることが多いので、知識を整理するのには役立っても、考えを深めることには役立たないことが多いのです。
だから大学生は、自身の向上のために、在学中にまず古典を読む機会を増やすということが大事になります。
この国語の思考力に対して、数学の思考力はまた違った性格のものです。
数学を学ぶことによって考える力がつくという人がいますが、そこでつく考える力は、あまり一般的なものではありません。数学の問題の解き方という限られた分野に関する考える力なのです。国語の考える力がより一般的なものであるのに対し、数学の考える力は主に数学という分野に限定されたものです。
しかしもちろん、数学によってつく一般的な学力もあります。それは物事がどのように分かりにくく見えても、理屈どおりに考えることによって必ず分かりやすくなるという知の構造に対する確信のようなものです。
理科系の人に見られる、こういう世界に対する理解というものに対する楽観的な姿勢は、やはりひとつの能力です。数学の難問は、このような理解に対する確信というような思考力を育てているのです。
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