これまでの全記事
雨ニモマケズ――日本にある豊かな古典の文化資産  2016年9月13日  No.2667
ホームページの記事は→2667


 今日は、朝から静かな雨です。
 つい先日までの夏の延長のような暑さとはうってかわって、急に秋が深まったようです。

 ――そういえば、セミの声も聞かなくなったなあ。
 そんなことを思いながら雨雲の空を見上げていると、ふと昨日暗唱検定を受けた小学2年生の子の言葉が浮かんできました。

「雨ニモマケズ 風ニモマケズ 雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ 丈夫ナカラダヲモチ 慾ハナク 決シテ瞋ラズ イツモシヅカニワラッテヰル……」

 ――なるほど。そういう人ばかりになったら、社会はもっと穏やかで住みよいものになるだろうなあ。
 ――そして、そこにお祭り好きな人が加われば、穏やかでしかも楽しい社会になるだろうなあ。
 そんなことをふと思ったのです。

 ――雨ニモマケズ 風ニモマケズ……。
 日本語は、昔から言霊と言われるように、ただ意味を表すだけでなく、人の心を動かします。
 それは、日本語の側ではなく、日本語を受け取る日本人の側に言葉によって心を動かされる要素があるからのようです。(「日本語人の脳」より)

 小学校低学年のころから、こういう日本の文化を反映した詩や文章を音読し暗唱している子は、自然にそういう日本の感性が身についていくと思います。
 そして、日本語は感性を豊かに表すだけでなく、論理の言葉も十分に表を力を持っています。
 だから、世界中の書物が日本語に翻訳されているのです。

 暗唱という教育方法は、昭和の初期まではかなり広く行われていたようです。
 明治維新を担った若者の多くは下層武士階級でしたが、その人たちの教養のもとになっていたものも古典の暗唱文化でした。

 この日本語の暗唱文化をもう一度復活させたいと思い、暗唱検定の仕組みを作りました。
 そして、日本の古典にいろいろ触れてみると、日本には本当に豊かな文化資産があるのだということに改めて気付きました。
 漢詩、論語、古事記、万葉集、古今集、百人一首、枕草子、源氏物語、平家物語、方丈記、歎異抄、花伝書、徒然草、奥の細道、五輪書、葉隠、和俗童子訓、言志四録……。

 いつか、誰もが自分の好きな古典の一節を暗唱するような、そういう雰囲気の教室を作っていきたいと思っています。

――――
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ蔭ノ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ

――――
「雨ニモマケズ」
宮澤賢治

233-0015 横浜市港南区日限山4-4-9言葉の森オンラインスクール 電話045-353-9061
 
 同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
暗唱(121) 日本語脳(15) 

 コメント欄

よう 20161108 9 
小1の時にお祖父ちゃんのお墓の前で暗唱した「雨ニモマケズ」。その時は
意味も分からず暗唱していたその詩が、今になって「あ、こういうことだったんだ」とわかる瞬間があります。これも暗唱の面白さだと思います。
コメントフォーム

雨ニモマケズ――日本にある豊かな古典の文化資産 森川林 20160913 に対するコメント

▽コメントはここにお書きください。 お名前(ペンネーム):

 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。



受講案内の郵送(無料)をご希望の方は、こちらをごらんください。
(広告規定に基づく表示:受講案内の郵送を希望される方はご住所お名前などの送信が必要です)

電話通信の無料体験学習をご希望の方は、こちらをごらんください。
(無料体験学習をお申し込みの方に、勉強に役立つ小冊子をお送りします。)

Online作文教室 言葉の森 「特定商取引に関する法律」に基づく表示」 「プライバシーポリシー」