子供の作文を見て、よく「もっと字をていねいに書かなきゃ」と言うお母さんがいます。
子供の作文を見て、よく「もっと字をていねいに書かなきゃ」と言うお母さんがいます。
そう言いたい気持ちはわかりますが、問題は子供の字にあるのではなく、つい先に欠点を見て指摘しまうお母さんの方にあるのです。
そう考えれば、世の中は簡単です。
悪いことがあるのではなく、もちろんあることにはあるのですが、その悪い方を先に見てしまう心の姿勢の方にあるのです。
このことで思い出すのは、中村天風の話です。
あるとき、師のカリアッパ氏が天風に質問をしました。
後ろから虎が追いかけてくる。やっと木に登ったら、その木の上から大蛇が近づいてくる。急いで枝から出ている蔦(つた)につかまったら、その蔦の根元をリスがかじっている。下は千尋(せんじん)の谷だ。どうする。
天風は、すかさず答えました。なあに、落ちてから考えりゃいい。
困ったことは、困ったことが起きてから考えればいいという姿勢でいれば、どんなときでもたくましく生きていけます。
困ったことを先回りして考えれば考えるほど、人間は小さくなっていくのです。
真面目な人ほど、「○○しなかったら、○○しなくなるよ」というような言い方をします。
強調するために、二重に否定語を使ってしまうのです。
同じことを、「○○したら、○○するよ」と言うだけで、子供の受け取る感じは全く違ってきます。
聞いていて明るくなるのです。
あれも直して、これも直してと、直すだけで一生終わってしまうような生き方をするのではなく、まず最初に今あるいいところを生かしてそれを伸ばす工夫をすることです。
よいところを伸ばしているうちに、直すつもりだったところは単なる小さなエピソードになってしまうことがほとんどなのです。