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STEM教育の先にあるもの(その1)  2019年6月23日  No.3762
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 先日、面白い調査を見ました。
 STEM教育という言葉を知っている人は、子供の教育に対する関心が高いという調査結果です。
 私はSTEM教育というのは最近の本によく出てくる普通の言葉だと思っていたのでこの話は意外でした。

 STEMとは、サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マセマティックスの頭文字です。
 これにアートをつけて最近流行っているのがSTEAMという言葉ですが、これはSTEMの本質とは別の概念を付け加えただけのもので、単なる思いつきのようなものです。

 それはともかく、STEM教育という言葉から受ける印象の第一は、こういう訳の分からないアルファベットは使わないでほしいということです(笑)。
 日本の教育が遅れていると思う最も大きな理由は、このように横文字が多すぎることです。

 それは結局、日本の風土や文化に根差した教育というものを作り出せない教育者が、海外からのものをただ日本に移植しようしているからだと思います。
 教育界は、戦後すぐのなし崩し的に欧米文化を受け入れた時代からほとんど進歩していないように思えます。

 ところで、私はこのSTEM教育というものに、基本の80%は賛同していますが、残りの20%は何か不足しているものがあるような気がしていました。

 それが、最近になって日本文化の根底に流れている重要な要素がないからではないかと思うようになりました。

 日本にも、江戸時代から、STEM教育の長い歴史がありました。
 だから、種子島の鉄砲もすぐに作ることができ、零戦や隼も作ることができたのです。

 しかし、そこにあるのは単なるサイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マセマティックスではありませんでした。
 それだけなら、誰がやっても同じです。

 話は飛びますが、戦時中の日本にも、原爆を開発する計画があったようです。
 しかし、その計画を知った天皇が、たとえ戦争に勝つためと言ってもそういう兵器を開発してはならないと研究を止められたのです。
 日本人であれば、この感覚はよく分かると思います。

 このことに似た話は、日本の歴史には数多くあります。
 ただそれが、今の歴史教育の中に、ほとんど伝わっていないだけです。

 サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マセマティクスの四つの言葉だけでは、「敵に勝つとはためとはいえそういう非間的な兵器の開発はやめよう」という発想は出てきません。
 むしろ、日本以外の外国の常識は、「目的は手段を正当化する」です。
 日本は違います。「君子財を愛す、これを取るに道有り」の文化です。
 手段にも、人の道というものがあるのです。

 天皇の終戦の詔勅でも、その根底にあったのは、人類にこれ以上非人間的な行為をさせてはならないという意思でした。
 負けそうだから戦争やめようというのではなかったのです。
 当時の世情を知らない人には理解しにくいでしょうが、人類がこれ以上無意味な殺傷することを辞めさせたいと思って終戦を宣言したのです。

 これも、ほとんどの日本人なら分かると思います。
 どっちが正しいかということよりも、もう争うのはやめよう、同じ人間なのだからという心理です。

 しかし、余計なことですが、当時のアメリカは、日本の本土空襲を行い、木造家屋をどれだけ効率よく延焼させ、国民の被害を大きくするかということだけを考えていたのです。
 これがSTEM教育の限界です。
(つづく)

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 コメント欄

森川林 20190623  
 日本では、STEM教育を普及させようとい声が生まれていますが、本当はもっと先に行く必要があります。
 なぜなら、サイエンスも、テクノロジーも、エンジニアリングも、マセマティックスも、既に日本にはあり、むしろその限界を多くの人が感じているからです。
 その限界とは、ひとことで言えば、心のない科学が発展しても、世の中はよくならないということです。
 しかし、心とSTEMは対立するものではありません。
 もっと大きな枠の中で一致するものなのです。

nane 20190623  
 種子島に鉄砲がもたらされたときの日本にあったのは、すでに普及しているSTEM教育でした。
 しかも、そこにあったのは、今言われているSTEM教育よりももっと大きな枠組みを持ったものだったのです。
 その日本のSTEM教育を広げていく必要があります。
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