前に、難しい学校に入った人とそうでない人との、これからの勉強の違いということについて書きました。
人間は、周りの環境に左右されます。そういう点で、難しい学校に入った子は難しい勉強に適応するようになりますが、やさしい学校に入った子はやさしい勉強に適応するようになり学力があまり伸びません。
そこまでのことだけを考えると、難しい学校に入った人に比べて、やさしい学校に入った人は、スタート地点でハンディキャップを背負っているように思われます。しかし、それは二つの意味でそうではありません。
第一は、世界の中では、勉強をすることもできないような環境に置かれている人がたくさんいるからです。日本で勉強して進学できるというのは、世界的に見れば非常に恵まれた上位の0.数%のうちに入るようなことなのだと思います。そう考えると、いい学校に入るかどうかということ以前に、勉強するチャンスがあるということ自体がきわめて大きなチャンスだと考えなければなりません。
第二は、学校生活中では、環境によって影響を受けるということが数多くありますが、社会生活に出れば、自分で環境を作り変えていくという必要がもっとたくさん出てくるからです。一生の間、与えられた環境に適応して先に進めるというような境遇の人は誰ひとりいません。皆、与えられた環境を、それがプラスの環境であれマイナスの環境であれ、自らの力で乗り越えて自分らしい人生を築いていくのです。そう考えると、学校時代にいい環境に適応して勉強してきたという人は、その延長で社会生活も考えてしまうために困難を跳ね返す力が乏しくなることもあると考えられます。学校生活に満足せず自力で運命を切り開く必要性を感じた人は、その考えを社会生活の中に出ても持ち続けることができます。
学校生活の数年間は人生の中ではごく短い期間です。その間に、何かを学ぶことも大切ですが、いちばん大事なのは、生き方の姿勢を身につけていくことだと思います。そのような大きな展望で考えれば、いい学校に入れなかったということは、逆に将来プラスになる可能性の方が高いのです。「School of adversity」という言葉があります。これは「逆境という学校」という意味です。人間がどこでいちばん成長するかというと、やはり困難を克服する中で成長するのだということです。
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