「日本の曖昧力」(呉善花著PHP新書)は、韓国の人が書いた日本文化論ですが、日本と日本人のすぐれた特徴をよく表しています。
この中で、日本人が普段気づいていない日本文化の特徴として、歪みを美しいと見る美意識ということが書かれています。
例えば、コーヒーカップのようなものでも、中国や韓国の人たちが好むのは、一般に均整のとれた明るく光る美しいものです。それに対して、日本人が好むものは、少し歪みがあるくすんだ色のものです。(これは、この本の口絵にそれぞれの種類のカップが載っているので、それらを見てみると、よくわかります)
この美意識は、建物などにも表れていて、法隆寺の建築物の配置は、左右が不均等に作られています。同時代の中国や韓国の代表的な建築物は、左右が均等に配置されています。
日本人は、こういう少し傾いたり歪んだりした未完成のようなものに美を感じるというのです。
これを、文章の好みにも当てはめて考えることができると思いました。
西欧の文章は、序論・本論・結論となるような形が主流です。文章の最後は、全体のまとめで終わるというような終わり方をするものがほとんどです。
ところが、日本人は、この最後を全体のまとめで終わるという終わり方が、いかにも完成された終わり方なので、かえってもの足りなさを感じる面があるようです。
日本人が、好む文章の終わり方は、「動作・情景の結び」のような終わり方です。
子供たちの作文でも、最後が「……と思いました。」という感想で書かれている作文があった場合、その最後の数行を削ると、とてもいい作文になることがよくあります。これも最後のまとめの部分を意図的に省略することによって、文章全体に日本人好みの歪みが生まれるからだと思います。
この歪みは、別の言葉でいうと余韻というふうにも言えると思います。
この余韻のほかに、もう一つ歪みの働きを持つ表現が比喩です。短い数行の文章を書く場合でも、その中に比喩が一言入っていると、その文章は作品性を持ちます。それはその比喩によって、短い文章に歪みが生じるからだと思います。
(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)
マインドマップ風構成図
記事のもととなった構成図です。
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