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ナイフとフォークの教材からお箸の教材へ  2009年7月24日  No.566
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 ↑ まだ小さいザクロの実

 現代の日本のような豊かな社会では、勉強するための教材も至れり尽くせりのものが多くなっています。

 教材以外にも、現代は、次々と目新しいものが人の興味を引くという状態が普通の生活になっています。コマーシャルなどを見ると、その流行りすたりのテンポの速さがよくわかります。また、余分なアクセサリーも多く、自動車や勉強机や携帯電話など日常の商品に様々なオプションが用意されています。

 一方、勉強の基本は、同じことの反復です。貝原益軒は、100字の暗唱100回という勉強法を提唱しました。実際に100字を100回読んでみると、約30分かかります。岸本裕史氏は、算数の分野で100ます計算という方法を開発しました。要するに簡単な計算問題を100題やるということです。

 このように同じことを同じやり方で飽きずに続ける力というのが勉強の力です。食事でいうと、おかずは日々変わってもよいが、主食であるお米だけは毎日飽きずに食べ続けるということです。主食は、例えば玄米であれば、お米だけで完全栄養食品になるので、それさえしっかり食べていれば、おかずはおまけのようなものでいいということなのです。

 100字100回の暗唱という勉強は、主食となる勉強です。この主食を補強するおかずとなる勉強が、いろいろな問題集を解く勉強です。

 勉強の中身が同じことの反復であるように、勉強の方法も同じやり方を続けるのが基本です。子供が飽きないようにと新しいやり方を次々に用意してあげると、勉強の中身が身につかないばかりか、勉強の方法も身につきません。

 勉強の中身によってやり方を変えるような教材をナイフとフォークの教材と呼ぶとすると、どの勉強も同じやり方で取り組むような教材は、お箸の教材と呼べるでしょう。

 ナイフとフォークの延長には、スプーンがあり、大きいスプーンがあり、小さいスプーンがあり、グレープフルーツ用のスプーンがありと、次々と道具は細分化されていきます。細分化を文化の豊かさと考えることもできますが、ナイフとフォークの文化に属してしまうと、それらの道具がなければ物が食べられなくなってしまいます。教材がないと勉強できないというのが、ナイフとフォークの教材の特徴です。

 それに対して日本の食事文化では、お箸だけで、つまむ、はさむ、切る、指す、様々な料理に対応できます。お箸の文化に属していれば、山登りをするときでも、1組のお箸で間に合います。

 教室や先生がいなければ、または教材を買わなければ、勉強できないというのでは、飽きずに長期間続ける勉強はできません。

 そのような教材ではなく、一つの方法さえ覚えていれば、どこでも、だれでも、いつでも、無料でできるというのが理想の勉強法です。

 これまでの社会で、ナイフとフォークの教材が主流だったのは、教育の中心が読む学力だったからです。読む学力は、他人と比較して評価する学力であり、競争し合う学力です。それは、ある一つの順位や点数を奪い合う学力とも言えます。

 これに対して、書く学力は、比較する学力ではなく、発表する学力です。そして、競い合う学力ではなく、表現し合う学力です。それは奪い合う学力ではなく、認め合う学力です。

 しかし、その先に作る学力というものがあります。作る学力は、表現するだけではなく、創造する学力です。それは、認め合う学力にとどまらず、与え合う学力になります。リナックスというOSは、多くの人が無償で自分の新しい創造を付け加えることによって、商用製品よりも優れた面を持つようになりました。

 未来の社会で求められている学力は、読む学力から書く学力へ、書く学力からさらに作る学力へと進歩していきます。その学力を育てるツールは、これまでのようなナイフとフォークの教材ではなく、もっとシンプルなお箸のような教材になっていくと思います。

(この文章は、構成図をもとにICレコーダーに録音した原稿を音声入力ソフトでテキスト化し編集したものです)

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