これまでの全記事
熱中力  2010年2月5日  No.764
ホームページの記事は→764


 昨日の「自然読解力」に続いて、今日は「熱中力」。力の入った記事が続きます。ただ「力」という言葉が入っているだけですが。

 つくば万博の1本に1万個も実るトマトの秘密は、ハイポニカ農法とともに、トマトが根を出し始めた時期に過酷な条件を与えることにあったと聞いたとがあります。つまり、根が、がんばろうという初期設定をするのが、出発点になっているのです。

 子持自然恵農場のニワトリは、ひなの時期に硬いえさを食べさせるそうです。「胃腸を丈夫にしないと生き残れない」という初期設定をしたニワトリは、成長しても元気に育っていくのです。

 日経新聞の「私の履歴書」という著名人の自伝の欄を時々読みますが、多くの筆者に共通しているのは、子供時代に何かに熱中したり、熱中しすぎて脱線したりするエピソードです。それが子供の自然な姿なのでしょう。


 ところが現代では、子供時代に、熱中はほどほどにして満遍なくいろいろなことをこなすという生活になりがちです。

 読書の仕方でよく相談を受けるのが、子供が同じ本ばかり読んで読むので困る、もっといろいろな本を読んで欲しいという相談です。その気持ちはわかりますが、同じ本を熱中して読み続ける価値をもっと評価してあげたいと思います。子供は、飽きずに同じことをしているときに、熱中力を育てているからです。


 この熱中力は、小さいころに大枠ができてしまうような気がします。現代では、いろいろなことをそつなくひととおりできるのがよい子と思われがちですが、子供時代に熱中の経験の少なかった子は、大人になっても熱中しにくくなるようです。大学生や社会人になって、自分が本当に熱中できるものが見つからないという人は、見つからないというよりも、熱中力自体が少ないままなのかもしれません。


 もちろん人間は、動物と違って年をとってからでも何度も初期設定をやり直すことができます。しかしやはり、学校から帰ると、暗くなっておなかのすくまで夢中で遊べる無邪気な子供時代の方が熱中力は育てやすいのです。


 これに関連して、集中力というものがあります。

 よく子供が小さいころ、遊びに熱中していて、ご飯の時間になっても遊びをやめないときがあります。

 スケジュールどおりに生きることに慣れている大人は、つい遊びを中断させて食事をさせようとします。しかし、こういうときは、その子供の遊びの方を優先させて、遊びが自然に終わるまで待っていてあげた方がいいのです。

 スケジュールに沿って生きることは、社会生活の中で自然に身につけていきます。しかし、ものごとに集中して心ゆくまでその時間を味わうというのは、子供時代でなければなかなか育てられない能力だからです。

233-0015 横浜市港南区日限山4-4-9言葉の森オンラインスクール 電話045-353-9061
 
 同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
子育て(117) 

 コメント欄
コメントフォーム

熱中力 森川林 20100205 に対するコメント

▽コメントはここにお書きください。 お名前(ペンネーム):

 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。


 低学年から学力の基礎を作る
幼長、小1、小2、小3の基礎学力をひとつの講座で学ぶ。
読書の習慣、国語算数の勉強、暗唱の学習、創造発表の練習をオンラインで。


受講案内の郵送(無料)をご希望の方は、こちらをごらんください。
(広告規定に基づく表示:受講案内の郵送を希望される方はご住所お名前などの送信が必要です)

電話通信の無料体験学習をご希望の方は、こちらをごらんください。
(無料体験学習をお申し込みの方に、勉強に役立つ小冊子をお送りします。)

Online作文教室 言葉の森 「特定商取引に関する法律」に基づく表示」 「プライバシーポリシー」