問題集読書のあと、四行詩で感想を書きます。
次の文章を読んだものとして、四行詩の書き方を説明していきます。(この文章は、小学4年生の7.3週の感想文課題になっているものです)
母屋はもうひっそり寝しずまっていた。牛小屋もしずかだった。しずかだといって、牛は眠っているかめざめているかわかったもんじゃない。牛は起きていても寝ていてもしずかなものだから。もっとも牛が眼をさましていたって、火をつけるにはいっこうさしつかえないわけだけれども。
巳之助はマッチのかわりに、マッチがまだなかったじぶん使われていた火打ちの道具を持ってきた。家を出るとき、かまどのあたりでマッチを探したが、どうしたわけかなかなか見つからないので、手にあたったのをさいわい、火打ちの道具を持ってきたのだった。
巳之助は火打ちで火を切りはじめた。火花は飛んだが、火口(ほくち)がしめっているのか、ちっとも燃えあがらないのであった。巳之助は、火打ちというものは、あまり便利なものではないと思った。火が出ないくせにカチカチと大きな音ばかりして、これでは寝ている人が眼をさましてしまうのである。
「ちぇッ」と巳之助は舌打ちしていった。「マッチを持ってくりゃよかった。こげな火打ちみてえな古くせえもなア、いざというとき間にあわねえだなア。」
そういってしまって巳之助は、ふと自分の言葉をききとがめた。
「古くせえもなア、いざというとき間にあわねえ、……古くせえもなア間にあわねえ……」
ちょうど月が出て空が明るくなるように、巳之助の頭がこの言葉をきっかけにして明るく晴れてきた。
巳之助は、今になって、自分のまちがっていたことがはっきりとわかった。――ランプはもはや古い道具になったのである。電灯という新しいいっそう便利な道具の世の中になったのである。それだけ世の中がひらけたのである。文明開化が進んだのである。巳之助もまた日本のお国の人間なら、日本がこれだけ進んだことを喜んでいいはずなのだ。古い自分のしょうばいがうしなわれるからとて、世の中の進むのにじゃましようとしたり、なんのうらみもない人をうらんで火をつけようとしたのは、男としてなんという見苦しいざまであったことか。世の中が進んで、古いしょうばいがいらなくなれば、男らしく、すっぱりそのしょうばいは棄(す)てて、世の中のためになる新しいしょうばいにかわろうじゃないか。
巳之助はすぐ家へとってかえした。
(新美南吉著 「おじいさんのランプ」より)
まず、文章を読みながら、自分で、いいと思ったところ(よくわかったところ、面白かったところ)に傍線を引きます。借りた本などの場合は、傍線を引くのではなく付箋を貼っておきます。
読み終えたあと、傍線や付箋の箇所を参考にしながら四行詩を書きます。
【1】四行で書く
四行詩の基準は、四行で書くことだけです。ひとつの行は「。」が来るまで書く必要はなく、文の途中で改行してかまいません。また、1行の長さは、長くても短くてもかまいませんが、20字以内にまとめる方が読みやすいでしょう。
【2】引用でも感想でもよい
文章を読んでの四行詩は、その文章の引用でも、その文章に対する感想でも、引用と感想を組み合わせたものでもかまいません。
【3】リズミカルに
口に出して読んでみたときに、心地よく言えるようなリズムで書きましょう。リズム感は人によって違います。自分の好きなリズムで書いてください。
次の例にある四行詩の「マッチを・忘れた・巳之助は」という行は、「4・4・5」のリズムがあります。「自分の・古い・商売を・見た」という行は、「4・3・5・2」又は、「7・7」のリズムがあります。どのリズムがよいというのではなく、自分が口に出して感じがよいと思うリズムで書いてください。
【4】あらすじや要約を書く例
マッチを忘れた巳之助は、
火打ち石を使おうとして、
使えない火打ち石の中に、
自分の古い商売を見た。
【5】たとえを使う例
「古くせえもなア間にあわねえ」
月が出て空が明るくなるように、
巳之助の頭は、
明るく晴れてきた。
【6】「ではなく」を使う例(「ではなく」は高校生の自作名言の練習で使う書き方です)
自分の商売を守るために
世の中の進歩を妨げるのではなく、
世の中の進歩を助けるために
新しい商売にかわるのだ。
【7】押韻を使う例(同じような音の言葉を組み合わせます)
ランプは古い道具だった。
電灯は新しい道具だった。
世の中の進むのをじゃまする人もいるし、
世の中の進歩を喜ぶひともいる。
火打ち石は古い。
ランプも古い。
巳之助の頭も、
古かった。
なぜ四行詩で書くかというと、四行で作品としてのひとつのまとまりができるからです。
四行詩は、作文を書くときにも使えます。いい着想がわいたが文章として長く書く時間がとれないというときは、四行詩で書いておくことができます。作文を書こうとすると30分や1時間はすぐたってしまいますが、四行詩であれば数分で書き上げられます。
そして、あとから時間のあるときに、その四行詩のテーマをもとにして長い文章を書くこともできます。
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