世間では単線的な学力観が根強くあります。例えば国語の成績で言えば、学力の高い方から順に5・4・3・2・1という成績がついていくという考え方です。この考え方は、子供が小学校から高校に通っているころには、そのまま子供社会の現実とほぼ一致します。したがって、子供が小学生から高校生にかけての親も、学力は高い方から低い方にピラミッドのような構造で成り立っているという考え方をしがちです。その考え方はもちろん間違っていません。問題は、そのピラミッドのような構造がそのまま社会に出てからも続いていくように考えがちな点にあります。
ピラミッドの上にいる子は、そのまま将来もその位置が約束されたかのように感じ、ピラミッドの中間にいる子は、そのまま将来もその位置に甘んじなければならないように感じてしまうのです。
ところが、実際の社会を見てみると、そのようなピラミッドとは違った構造があることに気づきます。世の中には、多種多様の職業があり、IT産業で働く人もいれば、八百屋さんで働く人もいます。歌を歌うことを仕事にしている人もいれば、会計の記帳を仕事にしている人もいます。それぞれ自分の置かれた立場で、自分の持ち味を生かして仕事をしているのです。
学校時代が、学力を育てるための時代だとすれば、社会は、その学力を生かす時代です。高い学力があることは、広い底辺を持つという点で有利なことですが、それだけでは学力を生かしたことにはなりません。学力を生かすとは、既にある学力を前提にして、それを創造的に組み合わせるということです。この創造性こそが、社会に出てから重要な能力なのです。
ピアニストの舘野泉(たてのいずみ)氏は、脳溢血で右手の自由を失います。しかし、彼は左手だけで弾ける曲があることを発見します。過去の時代にもやはり、舘野氏のように病気や事故で片手を失ったピアニストたちがいたのです。彼らは、不足している片手の能力を嘆くのではなく、今自分が使えるもう一つの片手の能力を生かすことで音楽活動を続けようとしました。
今自分が使えるものを生かす。これが作文的な勉強です。
233-0015 横浜市港南区日限山4-4-9
●言葉の森オンラインスクール 電話045-353-9061
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
コメント欄
コメントフォーム
創造と発表の新しい学力
受講案内の郵送(無料)をご希望の方は、こちらをごらんください。
(広告規定に基づく表示:受講案内の郵送を希望される方はご住所お名前などの送信が必要です)
電話通信の無料体験学習をご希望の方は、こちらをごらんください。
(無料体験学習をお申し込みの方に、勉強に役立つ小冊子をお送りします。)●Online作文教室 言葉の森 「特定商取引に関する法律」に基づく表示」 「プライバシーポリシー」