日本人は、教育熱心だと言われていました。確かに、日本には教育を大切にする文化がありました。しかし、それは歴史的に形成されてきたものです。
今、日本人の学力は、OECDの調査などにも表れているように次第に低下しています。他国との比較だけでなく、大学や企業でも、「昔の学生の方が優秀だった」という声はよく聞かれます。
また、教育の熱心さについても、日本は、中国や韓国に追い抜かれているようです。それは、中高生の家庭勉強にかける時間の少なさや、大学で学ぶ日本人の学生の意欲の低下などにも見られます。
日本の教育文化の多くを担ってきた、会社の仕事における教育機能も、年功序列制の崩壊と派遣労働の普及とともに後退しています。
日本人の学力低下は、日本の社会の教育力低下によるものです。では、なぜ日本の教育力がこのように低下してきたのでしょうか。原因は、三つ考えられます。
第一は、家庭教育がうまく機能していないことです。子供たちの一部は、テレビ漬け、ゲーム漬けの生活を送っています。ほかの一部は、塾や習い事漬けの生活を送っています。また、家庭で行われる教育の多くはドリルを中心としたもので、真に意味ある学力の養成ができているとは言えません。
第二に、その結果、子供たちの勉強力格差が激しくなっています。昔の子供たちは、皆同じように学校が終わると戸外で遊んでいました。そのため、そのような均質な子供たちを教える学校の一斉授業は、学力向上に大きく役立っていました。しかし、現在は、子供たちの勉強力が上にも下にもばらついているので、一斉授業という形式が困難になっています。その結果、私立化に拍車がかかり、早い時期からの受験勉強が広がるようになりました。
第三に、受験の低年齢化が進み、勉強の目的が受験の合格、つまり勝ち負けになった結果、学力をつけるための教育ではなく点数をよくするための教育が増えてきたことです。例えば、「難しい問題は飛ばして、易しい問題を確実に解く」とか、「うっかりミスをなくすことに力を入れる」とか、「志望校の傾向にあった勉強をする」とか、「したがって、受験に関係のない勉強はしない」というような発想を、先生も親も子供も持つようになってきました。これが、勉強の本来持つ「学ぶ面白さ」を大きく阻害する要因となっています。
では、これらの問題に対する解決策はあるのでしょうか。
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