6「 天は 人の 上に 人を 造らず 人の 下に 人を 造らず」と 言えり。されば 天より 人を 生ずるには、 万人は 万人みな 同じ 位にして、 生まれながら 貴賤上下の 差別なく、 7万物の 霊たる 身と 心との 働きをもって 天地の 間にあるよろずの 物を 資り、もって 衣食住の 用を 達し、 自由自在、 互いに 人の 妨げをなさずしておのおの 安楽にこの 世を 渡らしめ 給うの 趣意なり。 8されども 今、 広くこの 人間世界を 見渡すに、かしこき 人あり、おろかなる 人あり、 貧しきもあり、 富めるもあり、 貴人もあり、 下人もありて、その 有様雲と 泥との 相違あるに 似たるはなんぞや。 9その 次第はなはだ 明らかなり。『 実語教』に、「 人学ばざれば 智なし、 智なき 者は 愚人なり」とあり。されば 賢人と 愚人との 別は 学ぶと 学ばざるとによりてできるものなり。
(「 学問ノススメ」 福沢諭吉) 0
|
|