カタツムリとナメクジは、どちらも巻き貝のなかまで、大昔、海に住んでいました。海に住んでいたころは、ナメクジにも殻があったのですが、どういうわけか、ナメクジは殻を捨ててしまいました。もっと身軽になりたいと思ったのかもしれません。カタツムリは、海に住んでいたときのまま、今でも殻をつけています。殻のないナメクジは、水気のないところではからからになってしまいます。一方、カタツムリは、雨が降るまで、殻の入り口に膜をはって待つことができます。
カタツムリの殻は、ヤドカリのようにだれかにもらったものではなく、生まれながらに身につけているものです。この殻は、体からしみ出した石灰分で作られ、体にくっついているので、カタツムリの殻と体とを引きはなすことはできません。この殻があるおかげで、カタツムリは、いつでも敵から身をかくすことができますが、ナメクジは、カタツムリのように殻の中にかくれることができないので、夜にしか行動しません。
ナメクジに塩をかけると小さくなっていきます。これは、塩をかけられたことによって、ナメクジの体の中の水分が外に出ていくためです。塩だけではなく、砂糖やこしょうでも同じです。ナメクジは、とけていなくなってしまったように見えますが、じっさいには、水分がなくなったために小さくなるだけです。もちろん、そのままにしておくと死んでしまいますが、水をかけてやると、まるで魔法をかけられたように、また元気になります。
もともとは海の中の生き物だったカタツムリとナメクジ。陸に上がってからは、殻を捨ててしまったナメクジの方が苦労が多そうです。歌にも歌われて人気のあるカタツムリに比べると、ナメクジは少し分が悪いようです。ナメクジは、びんぼうくじをひいてしまったと思っているかもしれません。
言葉の森長文作成委員会(Λ)
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