a 読解マラソン集 1番 ソーラーハウス sa3
 省エネルギーしょう     という言葉ことばを聞いたことがあるでしょう。部屋へやの電気をこまめに消しけ たり、冷房れいぼう暖房だんぼう温度おんど設定せってい控え目ひか めにしたり、エレベーターや自動車じどうしゃをやめて自分の足で歩くように心がけたりすることです。今は、身近みぢか省エネルギーしょう     から広がって、社会全体ぜんたい取り組んと く でいこうという運動うんどうになっています。
 エネルギーを生みだすためには、もとになる資源しげん必要ひつようです。ちょうどわたしたち人間や動物どうぶつが、歩いたり手を動かしうご  たり喋っしゃべ たりするために、食べ物た ものをとるのと同じです。ところが、地球ちきゅう資源しげんには限りかぎ がありますから、ひとりひとりが節約せつやくをしていかなくてはなりません。
 また、資源しげんをエネルギーに変換へんかんするためには、要らい ないものを空気中に排出はいしゅつしなくてはなりません。二酸化炭素にさんかたんそなどの排出はいしゅつぶつは、大気汚染おせん引き起こしひ お  、やがては地球ちきゅう全体ぜんたい気温きおん徐々にじょじょ あげてしまいます。これが地球ちきゅう温暖おんだん呼ばよ れるもので、異常いじょう気象きしょう農作物のうさくもつへの影響えいきょう、海水めん上昇じょうしょう紫外線しがいせん問題もんだいなど、さまざまな問題もんだい原因げんいんとなっています。人間だけでなく、すべての生き物い もの住みす やすい環境かんきょう守るまも ためにも、エネルギーの節約せつやく必要ひつようなのです。
 では、使っつか てもなくなる心配しんぱいのないエネルギーはないのでしょうか。それは、身の回りみ まわ に見つけることができます。冬の寒いさむ 日のねこは日の当たる明るい窓際まどぎわで、いちばん温かあたた そうなゆかの上に、幸せしあわ そうにまるくなってねむっています。ねこ日向ぼっこひなた   の名人です。
 このとき、ねこの体の毛のあいだにさしこんだ太陽たいようは、ねこの毛の奥深くおくふか に入りこみ、ねつ変化へんかしてほとんどがねこの体に吸収きゅうしゅうされています。とても効率こうりつのいい、太陽たいようエネルギー活用の仕組みしく になっているのです。忙しいいそが  ときに、よくねこの手も借りか たいと言いますが、寒いさむ ときには、ねこの毛も借りか たいと言えるかもしれません。
 このねこ日向ぼっこひなた   の原理を、わたしたちのくらしに活用したもの
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が、太陽熱たいようねつ温水おんすいやソーラーハウスという住宅じゅうたくです。太陽たいようのエネルギーを建物たてものの中にとらえて、それでお風呂ふろ温水おんすいをつくったり、温水おんすい建物たてもの全体ぜんたい暖房だんぼうしたりしています。
 更にさら 、ソーラーハウスがねこ日向ぼっこひなた   より一歩進んすす でいるところは、太陽たいようのエネルギーを電気エネルギーに変えか られることです。天気のいいときに発電はつでんした電気で、家の中の電化でんか製品せいひん使えつか ます。あまった電気は、電力会社が買い取っか と てほかの家で使わつか れます。科学の力を使っつか ていくと、日向ぼっこひなた   のおすそ分けができるのです。
 省エネルギーしょう     という節約せつやくの考え方から、エネルギーの変換へんかんという新しい考え方に目を向けるむ  と、さまざまな可能かのうせいが見えてきます。太陽たいようのような自然しぜんのエネルギーから、より効率こうりつのよいエネルギーがもらえるように科学の研究けんきゅう続いつづ ています。
 日向ぼっこひなた   をしているねこも言っています。
「ソーラーエネルギーか。ソーラー、エエネエ。」

 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会(μ)
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a 読解マラソン集 2番 コーヒーの歴史 sa3
 コーヒーは、世界せかい最ももっと 親しまれている飲み物の もののひとつです。世界中せかいじゅうで、毎日二十おくはい分ものコーヒーが消費しょうひされています。世界中せかいじゅうで売り買いされるコーヒーのりょう膨大ぼうだいで、その売上がくは年間八ちょう円にものぼります。
 このように世界中せかいじゅうで親しまれているコーヒーですが、その歴史れきしがアフリカに始まっはじ  たことはあまり知られていません。コーヒーの木は、もともとエチオピアの高原に自生していました。コーヒーは、十五世紀せいきまでもっぱらアラビア半島はんとうでのみ栽培さいばいされ、国外に持ち出すも だ ことはできませんでした。
 十七世紀せいきに、オランダ人がコーヒーの苗木なえぎをオランダ本国へ持ち込みも こ ました。そして十八世紀せいきに、コーヒーの木は、フランスの国王ルイ十四せいへの贈り物おく ものとして、フランスの植物しょくぶつ園に送らおく れました。当時、コーヒーの木は大変たいへん貴重きちょうひんでした。
 やがて、フランスはコーヒーの栽培さいばい輸出ゆしゅつ乗り出その だ うとしますが、計画はことごとく失敗しっぱいします。
 あるとき、一人の海軍かいぐん士官しかんが、ひそかにコーヒーの苗木なえぎ持ち出しも だ 、カリブ海にある自分の農園のうえん栽培さいばいしようと考えました。当時の船は帆船はんせんで、長い船旅ふなたびの間に飲むの 水もなくなるほどでしたが、かれは自分の飲みの 水を苗木なえぎ分け与えわ あた て、ようやく農園のうえんにたどりつきました。
 海を渡っわた たこの苗木なえぎは、その後、南北アメリカ諸国しょこくにコーヒーの栽培さいばいを広めるもととなりました。今では、八十もの国や地域ちいきで、推定すいてい百五十おく本のコーヒーの木が栽培さいばいされています。
 コーヒーの成分せいぶんであるカフェインは、神経しんけい興奮こうふんさせる働きはたら があります。人間の体にはもともとドーパミンという物質ぶっしつがあり、これは快感かいかん感じるかん  とたくさん分泌ぶんぴつされます。このドーパミンの働きはたら 抑制よくせいする物質ぶっしつがアデノシンで、人間は普段ふだん興奮こうふん安静あんせいのバランスを
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とって暮らしく  ています。ところが、カフェインはアデノシンと形がているので、アデノシンのかわりに先にドーパミンに結びついむす   てしまい、そのためにコーヒーを飲むの とドーパミンの興奮こうふん続くつづ ようになります。子供こどものうち、コーヒーは控えひか た方がよいと言われるのはこのためです。
 さて、コーヒーまめには、いろいろな種類しゅるいがあります。有名ゆうめいなところでは、ブルーマウンテン、モカ、コナ、キリマンジャロなどです。みなさんも大きくなったら、いろいろなコーヒーのあじ飲みの 比べくら てみてはどんなモンジャロ。

 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会(Μ)
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a 読解マラソン集 3番 ホタルの光 sa3
 毎年五月の終わりお  から七月にかけて、ホタルのすがたを見ることができます。夏の夜、水辺みずべの草むらなどで、ホタルが光っているのを見た人もいるでしょう。ホタルは夕方、西の空がだんだん暗くくら なって星の光が見えはじめるころから、少しずつ光りはじめます。風がなくて空気が生あたたかい、月明かりのない夜には、特にとく 多く飛ぶと のが見られます。その光は幻想げんそうてきで、多くの人の心をとらえてきました。ではホタルは、何のために光るのでしょうか。 
 ホタルの光は、恋人こいびとと知り合うための信号しんごうです。ホタルのオスとメスは、真っ暗ま くらな夜に相手あいてがどこにいるのか探しさが ます。しかし暗闇くらやみの中では、お互い たが のすがたを見つけるのは大変たいへんです。そこでホタルは、光で合図を送っおく て、相手あいてのすがたを探し出すさが だ のです。 
 まず、オスが一生懸命いっしょうけんめい光を出して、暗闇くらやみのどこかにいるメスに信号しんごう送りおく ます。それを草のかげから見て気に入ったメスは、自分も光を出して「オッケー」のサインを返しかえ ます。そうしてオスはメスの光をたよりに、ゆらゆらと近づいて行くわけなのです。
 このため、人間が懐中かいちゅう電灯でんとうでホタルを照らして  たり、カメラのフラッシュをたいたりすると、ホタルは恋人こいびとがさがせなくなってしまうことがあります。
 ホタルには、いろいろなてきがいます。クモもそのひとつです。ホタル見物けんぶつに行って、光りっぱなしで少しも位置いち変わらか  ないホタルは、たいていクモの巣   すにひっかかったホタルです。
 川の汚れよご 農薬のうやくによって年々数を減らしへ  てきたホタルですが、人間の力でホタルを復活ふっかつさせる試みこころ 各地かくちで行われています。ホタルのえさになるカワニナは清流せいりゅう育つそだ ので、川をきれいにすることが最初さいしょ仕事しごとです。ホタルの棲めす 自然しぜん取り戻すと もど ことが、人間にとっても住みす よい世界せかいを作ることなのです。
「ところで、ホタルさんの好きす なカワニナはどこにいるんですか。」
「きれいな川にな。」
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 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会(γ)
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a 読解マラソン集 4番 体の軽い鳥 sa3
 大昔おおむかしの鳥の祖先そせんは、ほかの動物どうぶつと同じように四本足を使っつか て歩いていました。長い年月のあいだに、前足がつばさ進化しんかし、今のように空を飛べると  ようになったのです。鳥は、爬虫類はちゅうるい仲間なかまから進化しんかしてきたので、トカゲの前足の骨組みほねぐ と鳥のつばさ骨組みほねぐ は、たいへんよくており、この二つをくらべると、前足がつばさ変わっか  たことがよくわかります。また、前足だけではなく、体をおおっている羽毛の一部いちぶつばさ変わりか  ました。風に向かっむ  進むすす と、何まい重なっかさ  風切羽かざきりばねによって、鳥は体を空中に浮かせるう   ことができます。
 しかし、つばさだけがいくら立派りっぱでも、飛ぶと ことはできません。つばさ動かすうご  部分ぶぶん大事だいじです。鳥のむねほねには大きな出っ張りで ぱ があり、船底ふなぞこのような形をしています。そこに、つばさをはばたかせる筋肉きんにくがついています。鳥のむね筋肉きんにくは、たいへん発達はったつしており、この筋肉きんにくの力で大きなつばさをはばたかせることができます。
 自由じゆうに空を飛ぶと ためには、体が重くおも てはいけません。普通ふつう、体を作っているもので、いちばん重いおも のはほねです。そこで鳥のほねは、竹のように中が空洞くうどうになっていたり、スポンジのようにスカスカになっているなど、体を軽くかる するための工夫くふうが見られます。しかし、スカスカのほねといっても、すぐ折れお てしまうような弱いものではなく、たいへんかたくて丈夫じょうぶにできています。
 また、体全体ぜんたい軽くかる するために、ほねの数も少なくなっています。あごのほね一緒いっしょになって、くちばしに変わりか  ました。がないため、鳥は食べ物た ものをすべて丸のみにしてしまいます。「のみ」にするのは、だけではなかったということです。ただ、そのままではたいへん消化しょうか悪いわる ので、おなかの中で食べたもの砕くくだ ことができるようになっています。その役目やくめをするのが砂肝すなぎもです。砂肝すなぎも砂嚢さのうとも呼ばよ れ、その名のとおりすなが入っています。砂粒すなつぶによって
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食べ物た ものをすりつぶすのです。
 変わっか  ているのはくちばしだけではありません。背骨せぼねの数も少なくなっていて、しかもぼうのようにまっすぐです。首が自由じゆう動くうご のに比べくら て、背骨せぼね自由じゆう動きうご がほとんどできません。づくろいをする鳥を見ると、体全体ぜんたいをひねることができないので、首だけをぐるりとうしろに回しています。しかし、そのおかげで、空を飛ぶと ときに体が安定あんていする上、離着陸りちゃくりく衝撃しょうげきから体全体ぜんたい守らまも れるようになったのです。
 体を軽くかる しなくてはいけない一方で、鳥は飛ぶと ために多くのエネルギーを必要ひつようとし、どんどん食べ物た ものを食べなくてはなりません。そこで鳥は、食べてすぐエネルギーに変わるか  ような食物しょくもつをとるようになりました。多くの鳥は草食ではなく肉食です。植物しょくぶつせいのものを食べる鳥もいますが、種子しゅし果実かじつなど、すぐにエネルギーになるものを食べます。
 鳥は、少しでも体を軽くかる するために、もう一つ工夫くふうをしています。それは、フンをためこまないということです。もし、鳥が便秘べんぴになったら大変たいへんなことです。フンのおもさで飛べと なくなってしまうからです。公園などでハトにフンをかけられてハッと驚いおどろ ても、「フン!」などと憤慨ふんがいせずに、「フーン、飛ぶと ためには仕方しかたがないのだな」と優しくやさ  理解りかいしてあげましょう。

 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会(κ)
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