私たちが味を感じることができるのは、舌や口の中にある味蕾の中の細胞が味を感じ、それを電気信号に変えて、神経を通じて脳に送るからです。味の感じ方は年齢だけではなく、性別や人種によっても違いますし、個人差もあります。また、味覚は、気候や風土などの環境にも左右されます。日本人は白人に比べて味蕾の数が多いので、日本料理のように繊細な味の料理が発達したのだという説があります。また、日本人の男性は女性よりも味蕾の数が多いので、甘いものを甘く感じすぎて苦手であるという説もあります。実際、苦味で測定する、「味盲」と呼ばれる味を感じにくい人の割合は、日本人では十人に一人くらいですが、白人ではその三倍近くいるそうです。
この、味を感じる味蕾の数は、年が若いほど多いのです。つまり、赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいるときがいちばん多く、年をとるとともに減って、老人になると赤ちゃんのときの半分から三分の一になります。
赤ちゃんは生まれる前、お母さんのおなかの中の羊水という水を飲んでいます。この水はわずかに甘く、お母さんのお乳に似ている味だそうです。味蕾の中の細胞が感じる味は、お母さんの食べる食事によってもわずかずつ変わってくると言われています。味蕾をたくさん持っている赤ちゃんが生まれてきたときには、すでに「わが家の味」になじんでいるのかもしれません。
老人では味蕾の数だけではなく、唾液の分泌も減ってくるので、食べ物がうまく唾液に溶けずに、味蕾に届きにくくなるのも、味を感じづらくなるひとつの原因です。ですから、老人になると、味を感じるまでに時間がかかったり、どちらかというと味が濃い食べ物を好むようになります。
ところで、現代では、若い人たちの間にも味覚障害の人が増えて問題になっています。味覚障害といってもいろいろなタイプが
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