南太平洋のまんなかの小さな島にやってきた学者のトール・ヘイエルダールはふしぎなことに気がつきました。島の人たちが、その島の先祖はどこにあるかわからない遠い場所からやってきたティキという酋長だという伝説を話してくれたのです。しかし、トールは、その島からはるか離れた南アメリカのペルーという国にも、昔「コンティキ」すなわち「太陽のティキ」という酋長がいて、あとから来た人々に追い出されて海をわたってどこかへ消えたという伝説があるのを知っていました。島にあるティキの石の像はほおひげをはやした白人の顔ですが、その像もまた、ペルーにあるものとそっくりだったのです。そのころ、南太平洋の小さな島々の人たちは、いったいどこからやってきたのか、謎とされていました。一方、ペルーにいた伝説のティキの民の白人たちがどこへ消えたかも謎とされていました。トールは、この二つは結び付けられるのではないかとひらめいたのです。
大昔には、海を渡る乗り物はいかだしかなかったので、この島の人たちは、ペルーからいかだでここまで渡ってきたにちがいない、とトールは考えました。アメリカに帰って、いろいろな学者にその話をしましたが、だれも信じてくれません。いかだが何ヶ月も沈まずに、太平洋をわたれる? そんなばかな、とみんなは相手にもしませんでした。
それなら実際にいかだで渡ってみよう、とトールは決心しました。同じような冒険好きの学者が五人集まりました。六人はペルーに行き、大昔の人と同じように、まず自分たちで木を切っていかだを作りました。その木はバルサといってカッターでも切れるほどやわらかいため、今でも工作の材料などによく使われている木です。いかだには、竹で編んで、バナナの葉で屋根をつくった小屋をのせました。そして昔と同じ布の帆をつけて、風を受けて走るようにしました。帆にはほおひげのある神様「コンティキ」の絵をか
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