「ゆうれい電車ぁ。」
「ゆうれいっ。」
「えーっ、何よ、それ。」
ぼくらは、「ゆうれい電車」ということばそのものに、こうふんして、しまった。
「ぼくひとりでさ、九回ためしてみて、九回とも同じようなことが起こった。それで、どうしてもみんなに、たしかめてほしかったんだよ。」
ぶると君だけがおちついて、説明している。
「くらいところから写真を取り出すのが、早いかおそいかで、中の電車は、横を向いたところだったり、しっぽのほうだけだったり、もう走りすぎていて、まったく写っていなかったりするんだ。明るいところでは、写真はずーっと変わらない。」
「あらやだ。わたしの耳のあなって、きゅうにふさがっちゃったのかしら。ぶると君の言ってることが、のうみそまで、ちっともとどいてこないわ。」
はら子が、自分の耳をほじってみせた。
「いやはや、はやいや、おれの頭ん中は、もう大こんらん、ぜんぶ赤信号だぜ。」
にせご君がためいきまじりにいった。ぼくも、のうみそがどろのかたまりになったような気分だった。「ざざざあーっ。」という外の夕立の音が、じかに頭の中にまでひびいてきて、のうみそまで流されそうだった。
「ぶると君の言うとおり、写真の中で電車が動いたんだとしてさ、それじゃ、この写真はいったいぜんたい、だれが写したの。ぶると君、きみが写した?」
はら子がぶると君に人さし指をつきつけた。
「ぼくじゃないよ。この写真は兄きのへやにあったのを、だまって持ち出したものなんだ。兄きか、兄きの友だちが写したんじゃないかな。まだ兄きには聞かないでいるんだけど。」
「そう。それじゃ、あなたの兄さんにじかに聞いたほうがてっとり早いわけだけど、写真がほんものなら、その元には、ほんもののゆうれい電車があるってわけでしょ。つまり、ほんものの「ゆうれい電車」がさ。」
はら子が、みんなの気にかかっていたことを、ずばり口に出していった。
「そ、そうなんだ。たしかにほんものがあるはずなのさ。そん
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