村の伝兵衛さんの家に、子ねこが六ぴきうまれました。そのうち五ひきは、ほうぼうにもらわれていきましたが、親によくにためすねこだけは、もらい手がなくて家にのこりました。そして、一年ほどもたつと、どれが親だか子だか、家の人でも、ちょっとわからぬほど大きくなりました。
ある夜、村のわかい衆が、酒もりをしようと、伝兵衛さんの家にあつまりました。ところが町へ酒買いにいくことになると、だれもじぶんがというものがありません。すると、ちえじまんの伍一というわかものが、この親子ねこを見て、
「おい、みんないいことがある。彦一をよんできて、このねこの親と子を見わけさせようじゃないか。いかに彦一でも、ひと目でこれがわかるはずはない。しかし、まけん気の彦一は、けっしてわからぬとはいわぬから、まちがったら町へつかいにやろうじゃないか。」
といいました。それはおもしろいというので、むかえにやると、すぐ彦一がやってきました。伍一は親子のねこをまえにおいて、
「おい彦一、このねこはどっちが親で、どっちが子が見わけがつくか。もしうまく見わけたら、ここにあるおかしをみんなおまえにやろう。そのかわりまちがったら、おまえは町まで酒買いにいくんだ。」
というと、彦一は、へいきで、
「いいとも。」
と、こたえ、いろりのそばにあったさかなのほねを、二ひきのねこのあいだになげてやりました。二ひきのねこはいちどにとびかかって、そのほねをおさえましたが、一ぴきのねこが、うまそうにたべるのをじっと見つめています。
彦一はこのありさまを見て、
「さかなのほねをたべているほうが子どもで、見ているほうが親ねこだ。伝兵衛さん、そうであろうが。」
といいました。ほんとうにそうだったので、伝兵衛さんがかんしんしてうなずくと、彦一は、ことばをついで、
「なあ伍一どん、ねこだって親は子から先にたべさせる。親というものは、ねこだって子どもをこんなにかわいがる。ああ、ありがた
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