渡り鳥は毎年、同じ巣にもどってくるといわれています。これまでの標識調査などによると、実際、同じ巣にもどってくる例はたくさん報告されています。何百キロ、何千キロという長い距離を飛んで、また同じ場所にもどってくるのですから、彼らはよほど正確な地図をもっているといわねばなりません。それと同時に渡りの方向を知るためのとびきり正確なコンパス(ら針盤)ももっていることになります。
彼らはいったいどうして、飛んでゆく方向を知ることができるのでしょう。そして、どうして目的の場所を知ることができるのでしょう。
古くから人々の間では、渡り鳥は、経験のある年老いた鳥につられて飛んでいる、といわれていました。まだ若い鳥や経験の少ない鳥は渡りのコースをよく知らないので、年をとった鳥を先頭にして、飛んでゆくというのです。たしかに、ガンやカモが飛ぶときは、一列にならんだり、くの字になったりして、いかにも先頭の鳥がリーダーのように見えます。
でも、この鳥は、必ずしもリーダーの年老いた鳥ではないことがわかってきました。
また、先頭を飛ぶ鳥は、たびたびいれかわっていることが観察されています。しかも、まったく渡りを経験したことがないはずの若鳥ばかりで飛んでいることもあるのです。
これについて、ドイツのシュッツという学者はおもしろい実験をしてみました。
シュッツは、まだ渡りを経験したことのない若鳥をぜんぜん見知らぬ土地につれていってはなしてみようとしたのです。
この実験には、シュバシコウというコウノトリのなかまが使われました。シュバシコウはドイツでは繁殖していますが、イギリスではまったく繁殖していません。シュッツは、渡りの時期がくると、この鳥をわざわざイギリスまで運んではなしてみました。本当の渡りのコースからはずれた、まったく見知らぬ土地からはなされた若鳥たちは、いったいどうしたでしょう。
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