子供の頃の私は、ものすごく内気で引っ込み思案、何事にも消極的で、胸の中で考えていることがおよそ行動にあらわれず、オドオド、ウジウジしていた。現在の私と知りあった友人達は、まず信じてくれないが、間違いなくかわいそうなほどおとなしい子だった。(中略)
このまま、ずっと大きくなっていくなんてあまりにつまらない。自分自身を変えてしまえば、こういう状態から抜け出せるのにと子供心に感じていた。
「こんな子じゃイヤだ!」と思い続けてはいても、一度出来上がってしまった周りの状況も、持って生まれた性格も、そうそう簡単には変えられるものではない。
相も変わらぬ内気な表皮の下に、変わりたい、変わりたいという願望が吹き出し口をみつけられないままたまりにたまっていった。
それが、思いがけず一気に爆発したのは、忘れもしない小学校三年の正月、三学期が始まって少したった朝だった。その年の正月に父を亡くし、忌引でしばらく休んでいた私はその朝、いつにも増して不安な面持ちで学校に向かった。深呼吸をしてやっと教室の戸を開けたというのに、私の席だったところに何と見知らぬ女の子が座ってる。きっと都会からの転校生なのだろう。垢抜けしたかわいい子だった。ランドセルを背負って突っ立ったまま鼻の奥がツーンと痛くなるのを感じていた。遠巻きにしたクラスの子達も、私自身でさえこれ以上は何も起こらず、やがて先生が来ておしまいになると思っていた。
「何でここに座っているの?」
「だって先生が言ったんだもの。ここの子しばらく休むからってさ」
こぼすまいと思っていた涙が、胸の中でグラグラ煮えたって、吹き上がった気がした。
「そうかい。じゃ、私は帰らせてもらうわ」
あっけにとられているクラスメートをぐるりと見回し、バタンと勢いをつけて戸を閉めると、その足で職員室に向かい、先生に
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