「ジョンこそ、誰が好きなんだよ。ずるいぞ僕ばっかり」
僕はときめきにつつまれながら、負けずにジョンにそう指摘した。父親のお古のアイビールックに身をまとったジョンが今度は赤くなる。
「そうだ、ジョンは誰が好きなんだ」
ロバーツが煽る。
「ひゅー、ひゅー」
サムは鼻水を垂らしながら目だけ細めて今度はジョンを冷やかした。
ジョンは星空を見上げていた。誰かのことをこっそりと思っているかのような恥じらった表情をしながら。
「そういう、ロバーツはどうなんだよ。君は誰が好きなんだ」
ジョンがそう応戦すると、今度はロバーツの顔が赤くなるのだった。
「ひゅーひゅー」
サムは相変わらずマフラーに顔を埋めて、欠けた歯の間から空気を吐きだしている。そのたびにひゅー、ひゅーは大きくなるのだ。
僕はサムのほうへ振り返って、指摘するのだった。
「サム、(狸先生風にいえば、サーンムという感じだ)サムこそ誰が好きなんだよ」
するとサムは顔を赤らめることもなく、いってのけたのである。
「僕? 僕はキャサリンさ。決まってるでしょう」
僕らはいっせいに大声をあげた。えーっ。その声が余りに大きくてお店の人が見に来たくらいだったのだ。
「サムはキャサリンが好きなのか?」
ジョンが確認するようにそういう。
「ああ、僕はキャサリンが好きだよ」
サムは気後れすることもなくそうはっきりというのだった。
「キャサリンだぞ、お前はあのキャサリンのことを好きだっていうんだな」
ロバーツの声は心なしか上擦っていた。
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