「後の世話が大変だから、雀の子だけはごめんだよ。それに死んだらかわいそうだもの」
とお母さんはうるさく言う。よくわかっているんだけど、小雀の声を聞くと狩猟本能が目覚め、お母さんの言いつけなんかふっとんでしまう。
庭で雀捕りなんかすると、きっと叱られるから、お城へ行くことにした。そこにはこの季節になると、大書院の屋根の下で生まれて巣立った小雀がたくさんいる。
お城の桜の木に、数羽の小雀がさえずっている。甘い声が胸をくすぐる。でも、萌えたった若葉にさえぎられ、姿はなかなか見えない。ためつすがめつ見つめていると、灰色の影が、においたつ若葉の中をすっと動くのがわかる。胸がどきどきしてくる。目が輝き、鼓膜がぴいんとはりつめる。ぼくはあの勇ましい猟犬だ。いや猟犬は木に登れないから、猿だ。でも、猿って小鳥を捕って食べるのかなあ……?
猟犬だって猿だってなんだっていい。ぼくは伏せ網をもって木に登った。
小雀は声こそ細くて幼いが、体は小さくても親鳥と同じく、独り暮らしできる力をもう十分もっている。近づくと、あわやというところですっと飛び立ってしまう。くやしいったらないが、ぼくの負けだ。こんなのをいくら追っかけたって、むだ。つかまえるこつは、発育の遅い子雀を探し出し、それを徹底的に追いまわすことだ。そのうち小雀は疲れて動けなくなる。作戦変更。
数本の桜の木をあたった末、一度に数メートルしか飛べない小雀を見つけた。もう半分捕れたようなものだ。
桜から桜へ、二人は小雀を追っかけた。小雀がふらつきながら、横の桜へ移ったとき、「しめたっ」と心の中で叫んだ。近くに木はない。一丁上がりだ。
ぼくは落ち着いて桜の幹に手をかける。虫を狙うカメレオンのように、ゆっくり距離を縮めていく。小雀はまだ口許の黄色い、小さ
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