シーソーのひみつ 読解検定長文 小1 冬 1番
公園の 遊具にシーソーがあります。 二人そろえば、 楽しく遊ぶことができます。シーソーは、ふつう 長い板の 真ん中に 支柱があり、 板の 両方の 端に、 人が 乗れるように 取っ手がついています。 地面を 足でポンとけると 体が 浮かび、 相手がけると 地面に 着陸します。そのたびに、おしりがはずんで、 板は 音でリズムを 刻みます。「ギッタンバッタン」「ギッコンバッコン」。 音を 遊具の 名前にして 呼んでいるところもあります。
同じ年の、 同じくらいの 背格好のお 友達と 乗るときは、シーソーはうまく 上下に 交互に 動きます。ところが、 お父さんや お母さんと 乗るときには、 自分の 方は 上がったままになって 困ることもあります。 大人のほうが、 体も 大きく重いからです。そんなとき、 お父さんや お母さんの 方がぐっと 進んで 板の 前の 方、つまり 支柱に 近いところにすわってくれると、バランスがとれるようになります。これは、どうしてなのでしょう。
それは、てこの 原理を 使っているからなのです。 例えば、 自分の 力ではびくともしないような 大きな岩を 動かしたいとき、ころあいの 棒と 小さ目の 石があれば、わずかの 力で 動かせます。まず、 棒を 岩の 下にすべりこませ、その 棒と 地面の 間に 小さ目の 石を 置きます。そして、 棒の 反対の 長い方の 端を 下に 押せば、 重い岩も 軽く動かせるようになります。
このてこの 棒が、シーソーの 板にあたります。 小さめの 石がシーソーの 支柱で、 大きな岩が お父さんというわけです。 お父さんが、シーソーの 支柱に 近づいてすわったことで、てこのかたちができあがり、 小さな自分の 体重でも 重たいお父さんを 持ち上げることができたのです。
どうしても 動かない 人のことを「てこでも 動かない」と 言いますが、これはそうとうの 意地をはっているか、 信念のかたまりなのでしょう。あまり 強情だと、 変てこな 信念だと 思われるかもしれません。∵
言葉の 森長文作成委員会(μ)
ペンギン 読解検定長文 小1 冬 2番
ヨチヨチとおぼつかない 足どりで 歩くペンギン。 小さく、 短い足で 支えられた 体を 右に 左にゆすりながら 歩く姿はまるで 歩き始めたばかりの 人間の 赤ちゃんのようです。そんなペンギンですが、ひとたび 水の 中に 入ると、 今までの 愛らしい姿は 一変し、つばさをはばたかせ、 魚のようなスピードで 優雅に 泳ぎます。まるで 水の 中を 飛んでいる 飛行機のようです。
空を 飛ぶことのできる 鳥とできない 鳥のちがいは、 骨と 羽にあります。 空を 飛ぶことのできる 鳥には、 竜骨突起とよばれる 大きな骨があり、その 骨で 翼を 動かす大きな筋肉を 支えています。 一方、ダチョウのように 飛べない 鳥には、この 骨はありません。しかし、 空を 飛ぶことのないペンギンには、 竜骨突起があるのです。これはペンギンの 祖先が 昔、 空を 飛んでいたことを 意味します。
では、なぜペンギンは 空を 飛ばなくなったのでしょう。 大昔、 空を 飛べる鳥だったペンギンは、 水面から 食べ物を 取っていましたが、やがて 海中にもぐってオキアミ、イカ、イワシなどの 魚を 捕るようになり、 今の 姿に 進化したと 言われています。
また、 空を 飛ぶためには 軽くて 大きく、 根元がまっすぐな 羽根がたくさん 必要ですが、 水中の 生活を 選んだペンギンにとってじゃまになるだけなので、かたくて 短く、 羽根の 根元が 曲がって、 体にぴったりそった一 枚の 板のような 羽に 変わったのです。ペンギンはこの 羽を 使って、オールでこぐように 泳ぎます。
ペンギンの 体には 水の 中で 生活する 工夫がたくさんあります。イルカのような 体型は、 水の 抵抗を 小さくし、 高速で 泳ぐことを 可能にします。くちばしと 舌には、のどのおくへ 食べ物が 流れるようにつきでたのこぎりのような 部分があります。つかまえた 魚などが 口から 逃げないようにするためです。 耳は、 高速で 泳いだ 後に 作られるあわのはじける 音が 魚などにぶつかって 出る反射音を∵ 聞いて、 食べ物の 位置が 正確にわかるようにできています。 羽毛は、 水を 通さないダイビングスーツの 役目をするというからおどろきます。
けれども、このダイビングスーツの 役目をするのは、いちばん 上の 羽毛だけです。いちばん 上の 羽毛が 抜けると、そこから 水が 入り、 体がぬれてしまいます。ですから、 羽毛がはえかわる 季節は、 海に 入ることができません。
「う、もう! 早く着替えが 終わらないかしら。」
新しいダイビングスーツがはえそろうまで、がまんしているペンギンの 声が 聞こえてきそうです。
言葉の 森長文作成委員会(Ω)
カンガルーの袋 読解検定長文 小1 冬 3番
カンガルーは、オーストラリアとパプアニューギニアだけに 住んでいます。カンガルーには 長いしっぽがあり、これは 後ろ足だけで 立つときにバランスをとる 役目もしています。
カンガルーのもう一つの 大きな特徴は、 雌のおなかにある 袋です。この 袋で、 お母さんは 赤ちゃんを 育てるのですが、それには 理由があります。たいていの 動物の 赤ちゃんは、 自分の 力で お母さんのお 乳を 飲めるようになってから 生まれてきますが、カンガルーの 生まれたての 赤ちゃんは、たいへん 小さく、マッチ 棒ぐらいの 大きさしかありません。 小さくて 弱い赤ちゃんは、 袋の 中に 入れて 守ってあげなくてはならないのです。 赤ちゃんは、 袋の 外で 生まれます。そのあと、 お母さんがなめて 作った 道を 一生懸命にたどって、 袋の 中に 入ります。 上手に 袋に 入ることができれば 一安心です。
袋の 中には、 お母さんのおっぱいがあるので、 中に 入った 赤ちゃんはさっそくすいついてお 乳を 飲みます。 袋の 内側には 毛が 生えていないので、ふんわりやわらかく、 お母さんの 体温のおかげで、いつもぽかぽか 温かいのです。その 上、 お母さんがときどきなめて 掃除をしてくれるので、 袋の 中はいつも 清潔です。また、 袋の 入り口は、マジックテープのように 閉じることもできます。 赤ちゃんが 入っていないときは、ぴったりとおなかにくっついて、ほこりや 雨が 入らないようになっています。
こんな 気持ちのいい 袋ですから、カンガルーの 赤ちゃんは、ずいぶん 長い間袋の 中で 過ごします。 袋は 伸び縮みするので、 大きくなった 赤ちゃんが 入っても 破れたりはしません。 生まれて 半年ぐらいたつと、ときどき 外に 出てとびはねる 練習をしますが、 何かにびっくりすると、 大あわてで 袋に 戻ってきます。 赤ちゃんがやっと 袋を 卒業するのは、 生まれて一 年ぐらいたってからです。∵
カンガルーにとっての お母さんは、まさに「おふくろさん」なのです。
言葉の 森長文作成委員会(κ)
脳は大食漢 読解検定長文 小1 冬 4番
脳は、 人間の 体の 中で 最もエネルギーを 必要とする 器官です。 脳の 重さは、 体全体の 重さのおよそ二パーセントを 占めると 言われています。たとえば、 体重が五十キログラムの 人間の 脳の 重さは、一キログラムになるというわけです。それほどの 重さを 占めているわけではありませんが、この 脳は 大変な 食いしん坊です。 人間が 必要とする 全エネルギーのうち、二十パーセントもが 脳に 使われています。しかも、ただの 大食漢ではありません。なかなかのグルメなのです。どうしてかというと、 脳がエネルギー 源として 取り込むのは、 ブドウ糖だけだからです。また、 脳は 余分なエネルギーを 蓄えておくことができないので、 絶えずブドウ糖を 補給し 続ける必要があります。
ご飯やパンなどの 穀類、ジャガイモやサツマイモなどのイモ 類など、 炭水化物と 呼ばれるものは ブドウ糖のもとになります。 体を 動かすためや 成長のためだけでなく、 脳の 働きを 活発にするためにも、きちんと 食事を 取ることは 大切だと 言えます。 眠りから 覚め、 栄養不足の 脳にとって、とりわけ 朝食は 最高の ご馳走です。
こんな 実験結果があります。ラットを 迷路に 放り込むと、まず 一目散に 走り出します。しかし、 人間のように 高度な 知能を 持たないラットのことですから、すぐに 道に 迷い、あがき 始めます。あがいているラットの 脳内は、どんな 状態になっているのでしょう。 脳の 中には 様々な 働きをする 場所があり、それぞれが 自分の 役目を 果たすために 働いています。 迷路は 空間を 認識する 能力を 必要とします。 迷路に 入れられたラットの 脳内の 空間記憶を 司る部分の ブドウ糖の 値は、 通常よりも 大きく落ち込んでいたそうです。それだけ 脳がエネルギーを 使ったということになります。 注射によって ブドウ糖を 補給してあげたところ、 迷路抜けの 成績が 上がったという 結果も 得られました。 疲れきった 脳が、 ブドウ糖というエネルギーを 補給したおかげで 見事に 元気を 取り戻したのです。∵
歩く、 走るという 大きな動作を 伴う体の 動きと 比べてみると、 脳の 仕事は、はっきりとは 目に 見えません。ですから、そんなにも 多くのエネルギーを 必要とするとは 想像できないでしょう。しかし、 多くのエネルギーが 必要だということは、それだけ 重要な 働きをしているからにほかなりません。 脳は 大変な 働き者です。 私たちが 眠っているあいだでさえひとときも 休まずに 働き続けます。 脳の 中は、 神経細胞がぎっしりとつまっていて、 体のすみずみまで 命令を 出しています。 心臓の 動きや 呼吸でさえ、 脳が 命令を 出しているおかげで 一時も 休まずに 続けられているのです。
「Oh! No.(オー、ノー) 少し休みたいよ。」
そう 思うこともあるかも 知れません。それでも、 脳は 働き続けます。
言葉の 森長文作成委員会(ω)
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