生命を宿したカプセル 読解検定長文 小1 夏 1番
たまごはニワトリから 生まれます。そのニワトリはたまごから 生まれます。さてどちらが 先なのでしょう。
たまごをうむ 動物は、ニワトリばかりではありません。サケ、マス、カエル、カメ、ヘビ、トカゲ、ハト、キジ、ダチョウ、それに 乳で 子どもを 育てるカモノハシも、たまごをうみます。サケとマスのたまごは 見分けがつかないほどよくにていますが、サケのたまごからはサケが、マスのたまごからはマスが、まちがいなくうまれマス。たまごは、その 動物の 生命を 宿したカプセルなのです。
鳥がたまごをうみ、それをひなにかえすには、 何日もかかります。その 間、 親鳥は、 外敵からたまごをまもるために、いろいろな 工夫をします。
高山にすむライチョウは、ハイマツの 中に 巣をつくり、 巣を 枯れ草でわからなくして 敵の 目をあざむきます。 川原にすむコアジサシは、 石ころと 見分けのつかないようなたまごを 小石の 上にうみます。コウノトリは、 高い木の 上に 巣をつくり、 敵が 近づくのをふせぎます。このように 親鳥たちは、 一生懸命たまごを 守っています。
では、たまごから 子どもになるまでの 変化をいろいろな 動物でくらべてみましょう。メダカは 水中生活をする 魚です。カエルは 水と 陸の 両方で 生活します。ニワトリは 陸だけで 生活します。このように、メダカもカエルもニワトリも、 生活する 場所はちがうし、 親になったときの 大きさや 形もちがいますが、たまごの 中で 育つようすをくらべてみると、よくにたところがあります。
ニワトリが 先か、タマゴが 先か。
「ニワトリさん、 お先にどうぞ。」
「いえいえ、タマゴさんこそ お先にどうぞ。」
「では、いっしょにそろって。」
「わたしたち、ニタワマトゴリ。」
言葉の 森長文作成委員会(Κ)
おいしいいも虫はいかが? 読解検定長文 小1 夏 2番
【1】 買ってきた 野菜の 葉に、いも 虫がたくさんついていたらどうしますか。 普通は「わあ、いやだ」と 急いで 取り除き、 野菜をすっかりきれいにしてから 調理するでしょう。【2】しかし 世界には、いも 虫を 見て「わあ、おいしそう」と 感じる人たちもいるのです。
アフリカの 一部では、ガの 幼虫であるいも 虫が 食用にされています。【3】それらの 地域では、キャッサバやトウモロコシなどのでんぷん 質が 食事の 中心なので、どうしても たんぱく質が 不足しがちです。しかし、 質のよいたんぱく 源は 高価で 手に 入りにくいのが 現状です。【4】ですから、 たんぱく質のかたまりであるいも 虫は 大変貴重な 補助食品なのです。 実際、一 皿のいも 虫は、 大人が一 日に 必要とする たんぱく質・ビタミン・ミネラルの 約四 分の三を 含むと 言われています。
【5】 秋の 雨の 季節が 過ぎると、いも 虫の 収穫が 始まります。 村の 女性たちは、 総出でいも 虫を 集めます。いも 虫は 内臓を 抜き、ゆでてから 天日干しにします。【6】この 乾燥いも 虫を、おやつがわりにそのままポリポリと 食べるのです。
このいも 虫は、ただおいしいだけではありません。ある 意味で、とても 効率のよい 食品でもあるのです。【7】いも 虫は、 人間には 食べられない 有毒の 植物でもかまわず 食べてくれます。そしてどんどん 肥え太り、わずか六 週間で 体重を四 千倍に 増やします。【8】その 丸々としたおいしそうないも 虫を、 今度は 人間が 食べるわけです。
「いも 虫君、いいねえ。あったかそうな 蓑を 着て。」
「それはミノムシ。」
【9】「 確か、 茶碗に 入っているんだよね。」
「それはチャワンムシ。」
「ときどき 足がかゆくなるけどね。」
「それは、ミズムシ。もう、いいもん。 無視。」【0】
言葉の 森長文作成委員会(Μ)
冗談から生まれたトライアスロン 読解検定長文 小1 夏 3番
トライアスロンの 競技の 歴史はまだ 新しく、二十 世紀の 後半に 最初の 大会が 開催されました。トライアスロンとは、ギリシャ 語で「三」を 意味するトライと、「 賞品」を 意味するアスロンを 合わせてできた 言葉です。その 名のとおり、 水泳、ランニング、 自転車の三 種目を 続けて 行ない、その 総合タイムを 競うレースです。どれか一つだけでも 体力のいるハードな 競技ですが、それをひとりで三つもこなすということで、 鉄人レースともよばれています。
この 競技が 生まれたのは、ハワイのオアフ 島でした。 海兵隊員たちが、一 日の 仕事を 終えて、ビールを 飲みながらくつろいでいるとき、オアフ 島で 行なわれている三つの 競技のうち、どれがいちばん 大変かという 議論になりました。三つの 競技というのは、オアフ 島一周の 自転車レース、ホノルルマラソン 大会、ワイキキビーチでの 遠泳大会のことです。だれもが、 自分の 出場した 競技こそが 最も苦しかったと 自慢げに 話すので、いくら 話し合っても 答えは 出ませんでした。そのとき、ビールを 飲んで 酔っぱらっていた 海軍司令官のジョン・コリンズは、ある 提案をしました。この三つの 競技を 合わせて一つの 競技にしたらどうかというのです。
まさか 本気で 挑戦する 者はいないだろうと、コリンズはほんの 冗談のつもりで 提案したのですが、 実際に 競技に 参加する 人があらわれました。 現在では、 日本でも 毎年多くの 大会が 開かれています。また、二〇〇〇 年に 行なわれたシドニーオリンピックから、トライアスロンは 正式種目になっています。
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「ぼくも、 新しい競技を 考えついた。」
「なあに。」
「ドッジボールと 槍投げと 火の 輪くぐりを 組み合わせるんだ。」
「 今度のオリンピックで 採用されるといいね。」
だれも 出ないと 思うけど。
言葉の 森長文作成委員会(κ)
クマノミの知恵 読解検定長文 小1 夏 4番
【1】 脊椎動物のほとんどは、 生まれたときから 性別が 決まっており、 途中で 変化することはありません。ところが、 同じ脊椎動物でも、 魚には、オスがメスへ、メスがオスへと 変化したり、 生まれながらにして 雌雄同体のものがあります。
【2】オスからメスへ 変化するものとして 代表的なのは、クマノミの 仲間です。クマノミは、 毒を 持つイソギンチャクと 一緒に 暮らすことで 有名です。【3】ひとつのイソギンチャクに、オスとメス 一匹ずつの 成魚と、 体の 小さな幼魚の 数匹で 暮らしていることが 多いのですが、この 成魚と 幼魚の 間に、 親子関係はありません。クマノミの 稚魚は、 卵から 孵化すると、すぐに 生まれたイソギンチャクを 離れ、しばらく 海の 中で 浮遊生活を 続けます。【4】そして、 全く別のイソギンチャクにたどりつき、そこで 元から 住んでいる 縁もゆかりもないクマノミたちと 共同生活を 始めます。これは、 親子で 繁殖してしまう 危険をさけるための 工夫です。
【5】 同じひとつのイソギンチャクの 中に 暮らしているクマノミたちは、 体の 大きさに 違いがあります。 群れの 中でいちばん 大きいのがメス、 次に大きいのがオスです。【6】三 番め 以降の 魚たちは、オスでもメスでもない 未成熟な 個体です。 卵を 産むのはメスですが、その 卵を 守るのは、おもにオスの 役目です。【7】 何らかの原因で、いちばん 大きいメスが 死んでしまうと、オスが 性転換をしてメスになり、オスの 次に 大きい未成熟な 個体がオスになって 繁殖に 参加します。クマノミの 世界には、このようにきちんとした 秩序があります。
【8】なぜいちばん 大きい個体がメスになるかというと、メスは 体が 大きいほどたくさんの 卵を 産むことができるからです。
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【9】「わたし、 昨日までオスだったメスで、 名前はクマオよ。」
「ぼくは、 今日からオスになった、 名前はクマコなんだ。」
「 何だか、 呼び方にクマっちゃうね。」
言葉の 森長文作成委員会(π)
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