カタツムリとナメクジは 読解検定長文 小1 秋 1番
カタツムリとナメクジは、どちらも 巻き貝のなかまで、 大昔、 海に 住んでいました。 海に 住んでいたころは、ナメクジにも 殻があったのですが、どういうわけか、ナメクジは 殻を 捨ててしまいました。もっと 身軽になりたいと 思ったのかもしれません。カタツムリは、 海に 住んでいたときのまま、 今でも 殻をつけています。 殻のないナメクジは、 水気のないところではからからになってしまいます。 一方、カタツムリは、 雨が 降るまで、 殻の 入り口に 膜をはって 待つことができます。
カタツムリの 殻は、ヤドカリのようにだれかにもらったものではなく、 生まれながらに 身につけているものです。この 殻は、 体からしみ 出した 石灰分で 作られ、 体にくっついているので、カタツムリの 殻と 体とを 引きはなすことはできません。この 殻があるおかげで、カタツムリは、いつでも 敵から 身をかくすことができますが、ナメクジは、カタツムリのように 殻の 中にかくれることができないので、 夜にしか 行動しません。
ナメクジに 塩をかけると 小さくなっていきます。これは、 塩をかけられたことによって、ナメクジの 体の 中の 水分が 外に 出ていくためです。 塩だけではなく、 砂糖やこしょうでも 同じです。ナメクジは、とけていなくなってしまったように 見えますが、じっさいには、 水分がなくなったために 小さくなるだけです。もちろん、そのままにしておくと 死んでしまいますが、 水をかけてやると、まるで 魔法をかけられたように、また 元気になります。
もともとは 海の 中の 生き物だったカタツムリとナメクジ。 陸に 上がってからは、 殻を 捨ててしまったナメクジの 方が 苦労が 多そうです。 歌にも 歌われて 人気のあるカタツムリに 比べると、ナメクジは 少し分が 悪いようです。ナメクジは、びんぼうくじをひいてしまったと 思っているかもしれません。
言葉の 森長文作成委員会(Λ)
地震、雷、火事、おやじ 読解検定長文 小1 秋 2番
「 地震、 雷、 火事、おやじ」は、 昔から 怖いものの 代表としてあげられてますが、 最後の「おやじ」は、 本来は「 大山風」と 言っていたもので、 台風のときの 強い風を 意味していたそうです。 自然には、 人間の 力では 太刀打ちできない 脅威が 秘められています。ここでは、その 中の 雷に 焦点を 当ててみましょう。
雷は、まず、 雲ができるところから 始まります。 地面や 海面近くの 湿った 空気は、 水分をたくさんふくみ、あたたまると 上にのぼっていきます。その 空気が 上昇すると、 温度が 下がり、 水分が 積乱雲となります。 積乱雲の 上の 方では 更に温度が 下がり、 水分が 氷になります。その 氷が 雲の 中を 落ちていくときに、 上に 向かう空気と 激しくぶつかり 合ってプラスとマイナスの 静電気が 発生します。プラスの 静電気を 帯びた 比較的軽い氷の 結晶は 雲の上のほうに 舞い上げられ、マイナスの 静電気を 帯びた 重い氷の 粒は 雲の 下のほうにたまります。
雲が 大きくなればなるほど 電気も 強くなり、 雲の 下の 方にたまったマイナスの 電気は、 地上のプラスの 電気を 目指して 一目散に 飛んでいきます。このとき、とても 大きな電流が 一度に流れるので、 激しい光と 大きな音を 出します。こういう 形の 落雷は 雷の九十パーセントを 占めています。 残りの十パーセントの 落雷は、 雲の上のほうにあるプラスの 電気が、 地上のマイナスの 電気目指して 飛んでいく 形の 雷です。 雷にはこのほかに、 雲から 雲へ 飛んでいくものもあります。
雷のエネルギーは、 雲の 大きさなどによってもちがいがありますが、およそ五 万アンペアにもなります。これは、六〇ワットの 電球を八 万個以上灯せるエネルギーに 相当します。わっとおどろくほどのエネルギーを 一瞬のうちに 放出しているのです。∵
昔の 人は、 雷を、 雲の 中にいる 魔物があばれているのだと 思っていたそうです。 雷が 鳴り始めたら、 外には 出ずに 家の 中で 魔物の 機嫌がおさまるのを 静かに 待ちましょう。
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暑かった夏も 読解検定長文 小1 秋 3番
暑かった 夏も 終わりに 近づき、 涼しい風が 吹き始めるころ、 夜になると 虫たちの 声が 聞こえてきます。そんな 虫たちの 鳴き声は、 秋の 到来を 知らせてくれます。
生まれつき日本語を 使っている 人は、 自然の 音を 左脳で 聞きます。 左脳は 言葉を 理解する 脳ですから、 虫の 音も 声のように 聴こえます。これ に対して、 英語など 欧米の 言葉を 使っている 人は、 自然の 音を 右脳で 聞きます。 右脳は 音楽を 感じる脳ですから、 虫の 音は 雑音にしか 聴こえないそうです。
コオロギ、キリギリス、スズムシ、マツムシ、ウマオイ、カンタン、クツワムシなど、 秋に 鳴く虫にはいろいろな 種類がいますが、 大きく分けるとコオロギ 類とキリギリス 類に 分けられます。 上から 見て、 右羽を 上にして 鳴くのがコオロギ 類、 左羽を 上にして 鳴くのがキリギリス 類です。「 右」という 漢字の 左半分を 消すとコオロギの「コ」という 字に、「 左」という 字の 左半分を 消して、たての 棒を 少し伸ばすとキリギリスの「キ」という 字になります。これが 覚え方です。
コオロギ 類には、コオロギ 科やカネタタキ 科の 虫がいます。キリギリス 類には、クサキリ、クツワムシ、ウマオイなど、たくさんの 虫がいます。どちらの 種類も、 鳴き羽を 持っているのはオスだけです。なぜなら、 虫が 鳴くのはメスを 呼ぶためだからです。また、 自分の 縄張りを 他のオスに 知らせるために 鳴くこともあります。
コオロギは、「コロコロ」と 鳴いたり、「リーンリーン」と 鳴いたりします。スズムシは、その 名のとおり 鈴のように、「リンリン」と 鳴きます。「ガチャガチャ」とうるさく 鳴くのはクツワムシ。まるでスイッチがオンになったように「スイッチョン」と 鳴き始めるのはウマオイ。「リーリーリーリー」と 簡単な 鳴き方をするのはカンタンです。いろいろな 音色を 楽しむことができる 秋の 夜の 草原は、まさに 地球のコンサート 会場です。
言葉の 森長文作成委員会(Λ)
生きているものには 読解検定長文 小1 秋 4番
生きているものには、すべて 寿命があります。しかし、 生物の 体を 作っている 細胞のレベルで 考えると、 実は寿命がないのです。
例えば、アメーバは、 自分の 体を 分裂させながら 増えていきます。 栄養がいいと、 自分の 体の 一部を 分裂させて、 自分を 増やしていきます。
このアメーバのような 増え方をしている 生物は、たまたま一つの 個体が 死んでも 自分の 分身は 生きていますから、 死んだことにはなりません。
実は人間にも、 同じようなことが 言えます。 人間はアメーバのように 分裂して 増えるわけではありませんが、 自分の 細胞の 一部を 子供に 伝えて 生きています。だから、 子供は、 お父さんや お母さんに 似ているのです。
このように 細胞は 無限に 生き続けていきますが、 人間の 個体には 寿命があります。どうして、このような 寿命があるのかはわかりませんが、この 理由は 次のように 考えることができるかもしれません。
例えば、もし 何百年間も 壊れない 自動車があったらどうでしょう。 古くなって、いろいろ 改良したいところが 出てきても、いつまでもその 古い車に 乗り続けなければなりません。 物は 壊れるから、また 新しいものを 作ることができるのです。
プラスチックは、 人間が 人工的に 作ったものです。そのプラスチックの 特徴は、 腐りにくいことでしたが、その 腐りにくさのためにいつまでも 自然の 中に 残り環境を 汚染するようになりました。 壊れないものばかりで 世の中ができていると、 新しいものが 登場できなくなるのです。
生物も 似ています。 寿命があるから、 新しい生物が 生まれ、その 新しい生物が 古い生物のできなかったことをできるようにしていくのです。∵
アメーバと 同じような 生き物にゾウリムシがいます。このゾウリムシは、 栄養状態のよいときに 自分を 分裂させて 増えていきます。しかし、七 百回ぐらい 分裂を 繰り返すと、それ 以上の 分裂はできなくなり、 突然すべてのゾウリムシが 死んでしまいます。そうならないように、ゾウリムシはときどき 別のゾウリムシと 結婚して、 今までの 自分とは 違う新しい子孫を 作ります。と 言ってももちろん、ゾウリムシがゲタムシやサンダルムシになるのではありません。ゾウリムシのまま 新しい性質を 手に 入れるのです。
寿命があるということは、 新しいものを 生み出す条件だと 言えるのかもしれません。
言葉の 森長文作成委員会(Σ)
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