小さなアリの
世界は、
不思議です。一つの
巣の中のアリたちは、おたがいが
仲間であることをにおいでたしかめあいます。
巣の
外で
出会ったときも、おたがいの
触角がふれあっただけで
仲間だということがわかるので、
食べ物をわけあたえたり、
協力してものを
運んだりします。
はたらきアリは、おどろくほど大きなものを
運んでいることがあります。アリはたいへんな
力持ちで、
自分のからだの二
倍ぐらいの
重さのものなら
持ち上げることができますし、十
倍の
重さのものでも
引きずって
運ぶことができます。大きすぎて一
匹で
運べないものは、
仲間といっしょに
運んだり、その
場で小さくちぎって
少しずつ
運んだりします。
仲間どうしはおたがいに
協力しますが、
巣がちがえばみんな
敵です。ちがう
巣のアリどうしが
出会うと、ものすごいたたかいになることがあります。じょうぶな大あごや、おしりの先からでる
蟻酸という
毒を
武器にたたかいます。
世界には、かわったアリがいます。おそろしいのは、アフリカにすんでいるサスライアリです。サスライアリの
通ったあとは、
食べられるものは
何一つ残りません。サスライアリの
群れは、たとえニシキヘビだろうと、
あっという間に骨だけにしてしまいます。
北アメリカやメキシコ
北部に
住むミツツボアリは、はたらきアリの中におなかが
異常にふくらむものがいます。ほかのはたらきアリが
集めた
蜜をおなかにたくわえ、
蜜の入れものの
役目をしながら、
巣の
天井からじっとぶらさがっているのです。はたらきアリはおなかが空くと、おなかに
蜜をたくわえたアリの
頭をたたき、はき出される
蜜をなめます。おなかに
蜜をたくわえたアリは、まるで生きている
食糧倉庫です。∵
「
蜜、ありますか。」
「はい、どうぞ。」
「ありがとう。」
「ぼくにも、ください。」
「もう、ありません。」
「ありー。」
言葉の森
長文作成委員会(κ)
シマウマの
体の
模様は、まるで
横断歩道のようです。
横断歩道の
模様はとても目立つので、シマウマの白と
黒の
模様も、
草原の中で目立ってしまい、
肉食獣に
簡単に見つかってしまうのではないかと
思うかもしれません。しかし、そんなことはありません。
アフリカの
日差しは
強烈です。
昼間、
太陽がぎらぎらと
照りつけて
大地が
熱くなると、かげろうが立ちのぼります。シマウマの
住んでいるサバンナ
地帯は、
広くなだらかな
丘のところどころに、
背の
低い木の
茂みや、
背丈の
高い草むらがあります。ゆらゆらするかげろうの中で、シマウマの
姿はちょうど木や草にまぎれて、見えにくくなります。あのシマ
模様は、ライオンやハイエナの
嗅覚がとどかないところにいるかぎり、
身を
守るのにとても
都合がよいのです。このように、
身体を見えにくくさせる
色のことを、
保護色と
呼びます。
シマウマが、なぜ
横断歩道のような
模様をしているかについて、もう一つ
説があります。それは、サシバエ(
刺しバエ)から
身を
守るためという
説です。アフリカには、ツェツェバエという大きなハエがいて、アブのように人や
動物を
刺します。ツェツェバエという
名前は、ボツワナの
言葉で「
牛を
倒してしまうハエ」という
意味です。ハエにとっては、
栄えある
名前かもしれません。
人間がこのハエに
刺されると、
体の中に
病原体が入って、ときには
命を
落とすこともあります。
ツェツェバエの目から見ると、シマウマのシマ
模様は見えにくいらしく、シマウマのまわりにたかるハエは、ほかの
動物と
比べてぐんと
少ないのです。
ところで、シマウマのしま
模様は、一
頭ずつすべて
異なっています。
人間の
指紋には一つも
同じものがありませんが、シマウマの
模様もちょうどそれと
似ています。
私たち
人間から見ると、どれも
同じように見える
模様ですが、一つとして
同じものがありません。∵
さて、しまのつく
動物は、ほかにもいます。シマリス、シマダイ、シマヘビ、
島田君。それは
人間です。
言葉の森
長文作成委員会(κ)