ゆうれい電車 読解検定長文 小4 冬 1番
「ゆうれい電車ぁ。」
「ゆうれいっ。」 「えーっ、何よ、それ。」 ぼくらは、「ゆうれい電車」ということばそのものに、こうふんして、しまった。 「ぼくひとりでさ、九回ためしてみて、九回とも同じようなことが起こった。それで、どうしてもみんなに、たしかめてほしかったんだよ。」 ぶると君だけがおちついて、 「くらいところから写真を取り出すのが、早いかおそいかで、中の電車は、横を向いたところだったり、しっぽのほうだけだったり、もう走りすぎていて、まったく写っていなかったりするんだ。明るいところでは、写真はずーっと 「あらやだ。わたしの耳のあなって、きゅうにふさがっちゃったのかしら。ぶると君の言ってることが、のうみそまで、ちっともとどいてこないわ。」 はら子が、自分の耳をほじってみせた。 「いやはや、はやいや、おれの頭ん中は、もう大こんらん、ぜんぶ にせご君がためいきまじりにいった。ぼくも、のうみそがどろのかたまりになったような気分だった。「ざざざあーっ。」という外の夕立の音が、じかに頭の中にまでひびいてきて、のうみそまで流されそうだった。 「ぶると君の言うとおり、写真の中で電車が動いたんだとしてさ、それじゃ、この写真はいったいぜんたい、だれが写したの。ぶると君、きみが写した?」 はら子がぶると君に人さし指をつきつけた。 「ぼくじゃないよ。この写真は兄きのへやにあったのを、だまって持ち出したものなんだ。兄きか、兄きの友だちが写したんじゃないかな。まだ兄きには聞かないでいるんだけど。」 「そう。それじゃ、あなたの兄さんにじかに聞いたほうがてっとり早いわけだけど、写真がほんものなら、その元には、ほんもののゆうれい電車があるってわけでしょ。つまり、ほんものの「ゆうれい電車」がさ。」 はら子が、みんなの気にかかっていたことを、ずばり口に出していった。 「そ、そうなんだ。たしかにほんものがあるはずなのさ。そん∵なのが、まいばん動いているのかとおもうとね、ぼかぁ、夜中に 「ぱんっ。」 はら子が、両手をならした。 「よーし、ぶると君のなやみも、みんなのなやみも、いっぺんに 「ああ、きょうは ( カキが、わらっている 読解検定長文 小4 冬 2番
「カキが、わらっている。」
花子は、そう思って木のえだに足をかけた。カキの実の皮がさけて、そこが黒くなり、ちょうど、口をあけてわらっているように見えるからだ。鳥がつついたので、そうなったのか、 きのうの雨で、カキの木はだはぬるぬるしていたが、木のぼりじょうずな花子には、たいして苦にはならない。去年、えだにつかまったまま、それがおれて、どしんと落ちたことをふと思いだしたが、そんなこともへいちゃらだ。 「そら。」手をのばして、わらったカキの実をもいだ。大わらいをしているカキを見つけては、ズボンのポケットに入れる。どろぼうポケットといって、ふくろみたいに大きい。それが、左と右についているから、たいていのものはまにあう。 大きいのを五つずつもいで、ポケットに入れた。「まだまだ入るのだが、まあ、このくらいにしてきょうはやめとこう。あしたのおたのしみー」 花子は、カキのえだをつたわって、おもやの屋根にのりうつる。屋根がわらがわれるとしかられるので、ネコみたいにはってあがり、むな木の上にまたがった。 そうして、大きな口をして、わらっているカキの実にかぶりついた。花子の口も、なかなか大きい。食べながら下を見ると、家の前の道で、七つか八つの女の子が、花子のほうを見あげている。 女の子は、緑色とべに色の水玉もようの服をきていた。水玉のふちを黒でかこんでいる。だから、ちょっとステンド・グラスみたいな感じだ。 花子は、あまいしるをたのしみながら、女の子の服地のもようを見ていた。 カキの実を、二つ食べてしまい、三つめを手にしたとき、女の子は、まだ、そこをうごかないでいる。 「あの子、カキをほしいんだな。」と思った。見たこともない女の子だけれど、花子は、屋根の上から声をかけた。 「これ、落としてあげるから、うけなさいよ。」 女の子は、なんのへんじもない。聞こえないようでもある。そこで、花子は、もういちど大きな声でさけんだ。 「ほら、これ、落としてあげる。うまくうけなさいよ。」 そうして、右手でソフトボールのたまをなげるような、モーションをしてみせた。女の子は、べつに両手をあげて、うけとる∵ようなかっこうもしない。 「こわいんだな。あんな小さな女の子に、ここからなげたのじゃ、すこしむりかな。」 花子は、またネコになって、そっと屋根をはいおりて、カキの木をつたわり、そこからするすると地面におりてきたが、カキの実はうまくつぶれなかった。 (石森 正三と石を投げた少年とは 読解検定長文 小4 冬 3番
正三と石を投げた少年とは、とうとう顔をつき合わせるところまできてしまった。
「おい。」 さきに声をかけたのは、相手の少年だ。 「いま、なんていった。」 すごい顔をしている。 正三は、はじめ自分と同じ年くらいと思ったが、近くで見ると、相手はどうも五年生か六年生くらいの大きさだ。色が黒くて、とても意地の悪そうなやつだ。 (これは、やっかいなことになったぞ。) 正三は、ほんとういうと、すこしこわくなってきた。けんかをやれば、むこうのほうが強いにきまっている。それに正三は、これまでけんかというものをしたことがないのだ。 (なぐられるかもしれんな。) だが、正三はやせがまんをはった。 「石を投げるなといったんだ。」 「なに?」 相手の目がきらりと光った。 「なんだと。よけいなお世話だ。」 その声を聞いたとたん、正三の目には相手がきゅうにおそろしいおとなのように見えてきた。 (あぶない。早く 正三の中で、そういう声が聞こえる。 そいつは、じりじりと正三に近づいて来た。正三はいまにもくるりとうしろを向いて走りだしたかったが、やっとがんばってそこにつっ立った。 「あれは、ぼくのひばりだ。」 正三は、自分でも思いがけないことをいったのである。 「なに? おまえのひばりだと。」 「そうだ。あれは、ぼくが 相手は、おどろいて正三の顔を見た。 「おまえのひばりだと?」 相手の少年は、あきれたようにいった。 「うん。あれは、ぼくのひばりなんだ。」 正三はほっとした。 (ああ、よかった。あぶないところだったな。) それから、とっさの時に、どうしてあんなことをいいだしたのだろうかと思うと、なんだかおかしくなってきた。 ふしぎなもので、こちらがへんなことをいったものだから、いまにもなぐりそうに 「ああ、 正三はしだいに 「なつめは、学校の帰りにときどき、いじめっ子に会うといってるが、あいつがそうかもしれないな。一ぱつ、くらわしてやればよかったな。」 ( 誰だって失敗なんか 読解検定長文 小4 冬 4番 そんな これでは注意したほうもたまらない。「これ、まちがってるんじゃない?」と言い、「あっ、そうか。いっけなーい」ですんじゃう会話が、 作業がおそいといってどなられ、センスがないといってののしられ、ミスでもしようものなら、「バカヤロー」と大きな もちろん、あまりおこられるので、自分はこの仕事にむいていないのではないかと、けっこう それなら、おこられるにしても、おなじことでおこられないようにしよう。そのための 作業がおそいのは、 おこられるポイントを、ひとつずつ整理して考えていくと、 「おまえって、ほんとにおこりがいのあるやつだな。おまえみたいなのをおこるのは、楽しくってしかたがない」 「どういうことですか!」 さすがにむっとなる。人の気も知らないで、楽しいとはなにごとか。 「あのな。よーくおぼえておけよ。人はおこられなくなったら終わりだ。おこられることは自分をのばすチャンスなんだ。だから、おこられなくなったら、自分が見はなされたか期待されていないと思え」 こちらが注意して、すぐに それより、多少 なぜ その理由を考え、それじゃぁこうしてみようと思うからこそ、つぎにつながる。そうして ( |