人生に必要なもの・・・それはタイミング |
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そっ啄の機という言葉があるが、それは、得がたい好機の意味で使われる。 |
もとは、親鶏が孵化しようとしている卵を外からつついてやるのと、卵の中か |
ら雛が外に出ようとするのが、ピッタリと息の合ったことをいう。親鶏が卵を |
つつくのが早すぎても遅すぎても中の雛は死んでしまう。このように、頭の中 |
に卵が温められていて、まさに孵化しようとしているときなら、親鶏が卵を外 |
からつつくように、何かきっかけがあれば、それで雛がかえる。しかし、この |
千に一番のかね合いが難しい。何でもない人間と人間とが、たまたま知り合い |
になる。それがきっかけになって、他の人たちとどれほど親しく交わっていて |
も得られなかったものが得られるかもしれない。一期一会だという。人間にと |
って価値のあることは、大体において時間がかかる。しかし、じっくり時間を |
かけたものでないと長い生命をもちにくい。育てて、寝かせておく。そして、 |
徹底的瞬間がくるのを待つ。そこでことはすべて一挙に解明するのだ。つまり |
、一番大切なことは、「人生何事もタイミングが肝心」ということなのである |
。 |
僕も、三年生の時に運命的な出会いをしたことがある。担任だった稲葉先生 |
に出会った。僕は、三年生になって、稲葉先生に出会うまでは、とっても内気 |
で恥ずかしがり屋だった。そのため、友達だってできなかった。でも、稲葉先 |
生は、手を挙げていない僕を指してきた。国語の時間で、自分の考えを述べる |
というものだったので、言葉の森をやっている僕にとっては楽勝だった。でも |
、手を挙げるのが恥ずかしかっただけなのだ。心の中で、まるで雛が外に出よ |
うとしている時のように、「よし!!手を挙げるぞ!!」と、決心したのと稲葉先 |
生が指したのが同時だった。なかなかいい意見が言えた。それから、自信のつ |
いた国語を中心に、社会、理科、算数と、発表の幅を伸ばしていった。稲葉先 |
生が、違う学校に行っても発表を続けた。今では、手を挙げるのが恥ずかしか |
った僕が、手を挙げていないと恥ずかしいまでになっていた。きっかけを作っ |
てくれた稲葉先生には、本当に感謝している。 |
きっかけといえば、面倒なことが嫌いだった僕に、読書のきっかけを与えて |
くれた人がいる。言葉の森の中根先生だ。中根先生は、僕が一番始めに感動し |
た本の、「シートン動物記」を薦めてくれた。その時は、学校で、読書が流行 |
り始めた頃だったので、僕も本を読んでみたいと思っていたころのことだった |
のだ。それを元に、僕は母に薦められた本を読み、ホームズ、ルパンの推理小 |
説を読み、読書が好きになっていったのだった。 |
「三年生(みつご)の魂百までも」ということわざを作ったが、意味は、三 |
年生の時までに教わったことは、百歳になっても忘れないということだ。だか |
ら、三年生ぎりぎりで稲葉先生に教わった発表の楽しさは、百歳になっても忘 |
れないことだろう。・・・・・・・・・つまり人生には、タイミング=そっ啄 |
の機というものが大切だということが分かった。 |