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人間らしい生き方
アジサイの広場
T.Oいう高3
 もう暗くなって帰宅途中の会社員や学生の姿もまばらになった頃、その中に
紛れて軽目のかばんを背負った小学生の集団がわっと駅前通りに現れる。まだ
幼さが残り今まさに遊び盛りのように見える子供たちは、流行のゲームの話題
に夢中になったり、その日のテストの出来について言い交わしている。子供は
のびのびと育てるのが良いと言われてきたが、幼い頃から強制的にでも勉強を
する環境に置かないと学力は伸びないというのが現代社会の持論であるように
思われるが、一概にそういえるだろうか。
 
 今まで日本人は、無理を含めた努力こそが成功への唯一の道という考えに基
づいて国を発展させてきた。実際に日本は世界有数の先進国となったが、その
代償に心のゆとりが人々の中から消えつつあるように見える。身を粉にして働
き、常に自分が所属する集団のために自己の利益を犠牲にしてでも貢献するこ
とを美徳とし、それが子供達にも押し付けられたような様子になっているのが
現状だろう。
 
 また、日本では「ありのままに生きる」ことが一部で誤解されていることも
事実であるように思われる。「ありのままに生きる」こととは、あくまで自分
の個性を最大限に活かして本人にとって最も充実した人間らしい生き方をする
ことであり、好き勝手に生きて他者に迷惑をかけるような振る舞いのことでは
決してない。最近では、この考え方が見直されてきており、集団意識が強い日
本において個性尊重への契機になれば良いと思う。
 
 自分の好きなように生きることは、自分の好きな個性だけを伸ばすことにと
どまるということにもつながりかねない。その点では、多少無理をした方が自
分を追いつめることで今まで見られなかったような能力を発揮できることもあ
る。しかし、人間は最終的には自分のために生きるのだから、自分にとって自
然に生きる方が人生において意義が見出せると思う。夜遅くに塾から飛び出し
てきた子供達も、志望校合格だけを最終目標にせず更に先を見つめてもらいた
いものである。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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