ひとこと(7月3週)
叱ること、叱られること
アジサイの広場
吉見こと大2
 若い時は、みんな自惚れや我が強いものだ。経験の浅いうちは、どうしても
自惚れが先行してしまう。そういう時にそのような自分に対して、あえて苦言
し叱ってくれる人ほど有難いものはない。その時は余計なお世話だ、と思うか
もしれないが成長していくうちに、その叱られたことが一つの財産と思えるよ
うになる。
 
  私は大学に入って友人と日雇いの荷物運びのバイトをした。特にサボって
いたわけでもないのに五十歳くらいの、そこのバイトの監督にこっぴどく叱ら
れてしまった。『もっと効率良くやれ』『お前ら大学生なんだろ』などと言わ
れるうちに友人と私は、このバイトを止めてしまおうかと思ったが、その場は
我慢して、なんとか仕事は終わらせた。しばらく経ってから友人と、このバイ
トのことを話すと、友人が『そのおじさん戦前、戦後に生れたばかりだから、
だらだらした学生みていると怒りたくなるのは無理ないよ』といった。なるほ
ど、と思った。そんなこともあって、大抵のきついバイトなら気にせずできる
ようになった。
 
  サザエさんを見ると必ず波平さんがカツオ君を叱る場面がある。大抵カツ
オ君は、その場では自分の行いを改めようとはしないが後から自分の行為の過
ちに気づき波平さんの言った言葉を受け入れる。典型的なパターンであるが、
最近では波平さんのような『厳父』は少なくなったと思う。サザエさんのよう
な大家族から今日のような核家族の家庭が増えたこともあるが『叱ること』が
できる人はすくないと思う。
 
  人生にとって『叱られること』は一つの財産である。『叱られる』ことで
自分の欠点、短所が分かる。だが現実的に波平さんみたいな厳父は多くない。
昔はよく子供たちが怖いものを『地震、雷、火、オヤジ』といっていたが最近
では全く耳にしなくなった。つまり『自分で自分を叱る』という心構えが重要
になる。名俳優と呼ばれた宇野重吉さんは『すべてのことに対しいて批判的に
みている』といっていた。自分に対しても批判的になることが自分を成長させ
る。