ひとこと(7月3週)
得意を伸ばすか苦手を直すか
イチゴの広場
加奈子かけ
 
 7. 1週 かけ 得意を伸ばすか苦手を直すか
 
 
 
 人にはそれぞれ、得意なこともあれば苦手なこともある。
 
 私は化学が全くと言って良いほど出来なかった。塾の数学の先生に化学を教
わりに行きもしたが、効果はなかった。そのため試験勉強もまず化学に時間を
かけてみるものの、苦手なため効率が悪く、他の教科にあてる時間がなくなっ
てしまうことがよくあった。一つでも単位を落とせば進級出来ないことになっ
ていたので、その頃は得意なものを伸ばすことより、いかに苦手科目をなくす
かの方が重要だった。
 
 「苦手をなくす」教育だと、一人一人の得意なものの芽が育ちにくいと思わ
れる。苦手を克服するには、それが得意な人からは考えられないほどの時間と
エネルギ-が必要である。しかし苦手をなくそうにも限りがある。いくら多く
の時間を費やし頑張ってみても、出来ないことはある。また、どうにか「ふつ
う」に出来るくらいになったとしても、それは「できる」のとは程遠い。それ
ならば、少しでも好きなこと、得意なことに力を入れる方が効果があると思う
。たとえそれが最初は下手の横好きであったとしても、続けていくことで力は
伸び、いつしか自分の中で自信に変わるだろう。
 
 たしかに、苦手をなくす教育は、落ちこぼれを少なくするとも言う。「苦手
で出来ない科目があると、学校に居づらいものだ」と言う人がいたのだが、そ
の気持ちは良く分かる。化学を得意とする人を見ると羨ましく、苦手な自分が
情けなかった。しかしその頃、得意とは言えなくても好きな科目はあった。そ
の授業のときだけは退屈ではなかった。好きなこと、得意なことは人によって
違う。隣の花の赤さを羨んでも始まらないのである。何でも出来る人などいな
い。そうなる必要もない。自分に目を向け、僅かな得意の芽を育て、きれいな
花を咲かせたい。