ログイン ログアウト 登録
 教育における優しい愛し方 Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
Onlineスクール言葉の森・サイト Onlineスクール言葉の森
記事 1030番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/23
教育における優しい愛し方 as/1030.html
森川林 2010/10/01 12:20 


 前回、「厳しい叱り方」の話を書いたので、今回は、優しい愛し方の話を書きたいと思います。


 優しく愛するというのは、難しいと言えば難しいことですが、簡単と言えば全く簡単なことです。それは、自分を捨てればいいだけだからです。と書くと、それが難しいのにという声も聞こえてきそうですが。(^^ゞ


 インドの聖者アマチは、会場に来た人をすべて一人ずつ抱きしめることによって癒すという旅を続けて世界中を回っています。(「聖者アマチとの対話」

 ある日、会場にハンセン病の男の人がやってきました。顔中から膿(うみ)が出ている患者です。アマチが静かにその額の傷口をなめはじめると、会場にいた人の中に気絶してしまう人が出てきました。そこで、アマチは全員に会場から出てもらい、その患者とアマチの従者との数人だけになったあと、口で傷口の膿を吸い出しては、洗面器に吐き出すという行為を続けたそうです。そして、膿を全部吸い終わると、静かにその人を抱きしめました。

 愛というのは、こういうことです。この話を極端に思う人もいるかもしれませんが、すべての愛には同じような本質があります。


 教室にも、いろいろな子が来ます。いい子がほとんどですが、時に、いたずらな子、言うことを聞かない子、反抗する子、意地悪な子なども来ます。そのときの大人の自然な感情は、「嫌だなあ」「避けたいなあ」というものです。

 しかし、そこで一転、その子を心から好きになってあげればいいのです。その心の転換には、理由も何も必要ありません。ただ一瞬で、心を愛の状態に変えればいいだけです。

 あえてコツのようなものを挙げるとすると、小さい子であれば、それが自分の子供だったらと考えてみることです。更に、その子がもうひとりの自分自身だったらと思えばいいのです。どんなに許せないことがあっても、自分を許せないという人はいません。

 なげやりで、やる気がなくて、反抗的な子を見ていると、普通の大人であればそういう子を相手にしたくなくなります。しかし、そこで気持ちを愛に切り換えると、なぜか笑いが生まれてきます。目の前のふてくされているような子が、すごく面白い存在のように見えてきます。この広い宇宙の中の、この小さな場所に、だれからも嫌われそうな子と自分がいるということが、すごく可笑しいことのように思えてくるのです。

 すると、思わず口から出てくる言葉にも冗談がこもり、子供の反応にも明るさが出てきます。そこで、その子供が急にいい子に変身してしまうこともありますが、別にいい子にはならなくても、その時間がその子と自分にとって楽しい時間になればいいのです。


 人間には、あらゆる許せない理由、嫌う理由があるにもかかわらず、たった一つの決心で相手を許すことのできる能力があります。愛も同じです。必要なのは、愛そうという決心だけです。

 どんなに許せない相手、嫌でたまらない相手に対しても、決心一つで愛することができます。それができないのは、自分を捨てる決心がまだないからです。

 ただし、愛とは、強い相手の横暴を許すことではありません。自分よりも強い相手の不当な行為に対しては、断固として闘うというのは最初の前提です。世界には、最近、そういう横暴な大国が多いので、というのはまた別の話になりますが。しかし、自分よりも弱い相手に対しては、何があっても許すことができなければなりません。


 この愛の練習方法としていちばんいいのは、トイレ掃除だと思います。唐突ですが(笑)。

 トイレ掃除には、「汚い」「嫌だ」という気持ちがだれにもあります。しかし、ここで自分を捨てることによって、なぜか自然にもっと別の感情が生まれてきます。それも、自分の家のトイレではなく、他人の家のトイレや、公園など公共のトイレであれば、なおいいと思います。

 昔、軍隊には人間を鍛えるという教育的な面がありました。旧日本軍の軍隊には、人間をいじけさせる面もかなりありましたが、軍隊が、いろいろな形で人間の規律や自己犠牲を学ぶ場所になっていたのです。

 しかし、今日の社会では軍隊はもう必要ありません。そこで、教育の中でトイレ掃除を行うようにすればいいと思います。どうしてもトイレ掃除だけはしたくないという人は、托鉢(たくはつ)でもいいかもしれません。

 何か古くさい話になってきましたが、日本の文化にはもともとこういう愛と寛容の精神を育てる仕組みが数多くあったのです。


 愛というのは、一つの決心です。動物も、自分の子供を愛するために自己犠牲もかえりみないという愛の行動をとるときがあります。しかし、人間の愛は、愛する理由が何もない中でも、たとえそれが敵であっても愛することができるという、動物の水準を超えた面があります。そして、それは決心さえすれば、だれにもできることなのです。



コメント欄

コメントフォーム
教育における優しい愛し方 森川林 20101001 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
まみむめ (スパム投稿を防ぐために五十音表の「まみむめ」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
子育て(117) 
コメント1~10件
読解問題の解き Wind
面白かった 10/11
記事 4027番
長文の暗唱のた たろー
この世で一番参考になる 9/30
記事 616番
「桃太郎」を例 匿名
役に立った 8/15
記事 1314番
日本人の対話と 森川林
ヨーロッパの対話は、正反合という弁証法の考え方を前提にしてい 8/6
記事 1226番
日本人の対話と よろしく
日本人は上に都合がよい対話と言う名のいいくるめ、現状維持、そ 8/5
記事 1226番
夢のない子供た 森川林
「宇宙戦艦ヤマトの真実」(豊田有恒)を読んだ。これは面白い。 7/17
記事 5099番
日本人の対話と 森川林
 ディベートは、役に立つと思います。  ただ、相手への共感 7/13
記事 1226番
日本人の対話と RIO
ディベートは方法論なので、それを学ぶ価値はあります。確かに、 7/11
記事 1226番
英語力よりも日 森川林
AIテクノロジーの時代には、英語も、中国語も、つまり外国語の 6/28
記事 5112番
創造発表クラス 森川林
単に、資料を調べて発表するだけの探究学習であれば、AIでもで 6/27
記事 5111番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
標準新演習算数 あかそよ
3の1はできました。 2は、答えを見るとなんとか理解できま 11/23
算数数学掲示板
2024年11 森川林
●サーバー移転に伴うトラブル  本当に、いろいろご 11/22
森の掲示板
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン