ログイン ログアウト 登録
 脳の働きから見た暗唱の仕組み Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 1049番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/25
脳の働きから見た暗唱の仕組み as/1049.html
森川林 2010/10/20 11:50 


 言葉の森では、子供たちの毎日の自習として暗唱の指導を行っています。

 この暗唱がなぜできるか、そしてどういう効果があるかということについて、脳の働きから考えてみたいと思います。

 まず左脳は、言語脳で言語の処理を中心に行っています。左脳は、右脳よりも強力ですが、その分活動が粗いので、主にβ波を出しているのではないかと思います。(「脳と音読」(川島隆太・安達忠夫)P176によると、音読などの言語的活動を行うと脳が活性化するそうです。しかし、これは、左脳がβ波が出しているとは言い切れないかもしれません。なお、脳が活性化するということと、音読をすると頭がよくなるということは、関係がないことのように思います。2010/1022追加)

 左脳は、デジタル的な処理をしているので、短期記憶に制約されています。だから、言語処理をするときは、逐語的に少しずつ処理しては忘れていきます。

 例えば、物語を読むとき、数語又は十数語の文字列から次々とイメージを作り、前の文字列はどんどん忘れながら読んでいきます。だから、最後にストーリー全体はわかっているものの、個々の文字列は記憶に残っていないのです。

 次に、右脳です。右脳はイメージ脳で、イメージや音楽の処理を行っています。

 右脳の処理はアナログ的なので、短期記憶に制約されません。例えば、景色を眺めているとき、その景色の中にある無数の要素がひとまとまりに頭の中に入ってきます。

 「青い空。雲がぽっかり浮かんでいる。遠くで鳥の声が聞こえる。静かに風が吹いている。もう秋だ。キンモクセイの花の香りがする」というような大量のイメージが一瞬にして右脳のイメージとして処理されます。

 しかし、右脳の処理は静かなので、α波やΘ波を中心とした脳波になっているのだと思います。(「脳と音読」によると、空で覚えた文章を音読しているときは脳が活性化せずにリラックスするそうです。しかし、これは、右脳がα波やΘ波を出しているとは言い切れないかもしれません。2010/10/22追加)。音楽を聴いていると心がリラックスするのはこのためです。ただし、歌謡曲のように歌詞という言語のあるものは左脳が働くので、クラシックのような曲だけのものの方が脳のリラックスにはいいようです。

 記憶術の仕組みは、アナログのイメージはいくらでも記憶に残るので、そのアナログのイメージに、覚えにくいデジタルの記憶を結びつけるというものです。

 さて、暗唱は、言語をデジタル的に覚えるものなので、一度で覚えられるのは短期記憶の容量となる7文節ぐらいまでに限られています。だから、30-50文字なら一度で覚えられますが、これが100字ぐらいになると短期記憶の容量を超えてしまいます。50字と100字は、単に量が違うだけでなく質が違うのです。

 しかし、この100字の文章も十数回繰り返すと、丸ごと暗唱できるようになります。同様に、300字や900字も手順を踏んで回数を重ねれば、子供でも大人でも誰でも例外なくすらすらと暗唱できるようになります。できないのは単に繰り返すという根性がないだけです(笑)。

 では、この300字又は900字の暗唱ができるようになったとき、脳の働きはどうなっているのでしょうか。

 900字の文章をすらすらとよどみなく暗唱しているとき、人間はこの文章を左脳で言語的に処理しているのではありません。右脳でひとまとまりのイメージか音楽として処理しています。だから、長い文章でも思い出そうとする気持ちなしに、自然にすらすらと言葉が口をついて出てくるようになるのです。

 これを繰り返していると、やがて必要に応じてすぐに言語の右脳処理が行われるようになるのだと思います。

 「古代への情熱」を著したシュリーマンは、もともと記憶が苦手だったようですが、大声で暗唱の練習をしているうちに、何ページにもわたる文章でも数回読めば覚えられるようになったそうです。

 本多静六は、若いときドイツに留学しましたが、経済的事情のために途中で留学を中断することになり、特別の卒業試験を受けることになりました。そこで、最も難しいと言われる教授の経済学の教科書を丸ごと暗唱しようとしましたが、最初は数行も覚えられません。何度も絶望感を抱きながら繰り返しているうちに、1週間ほどたつと急にすらすらと何ページも暗唱できるようになったそsうです。

 しかし、これは記憶力がよくなったというよりも、言語の処理の機構が変わったということだと思います。



同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
暗唱(121) 日本語脳(15) 

コメント欄

森川林 2010年10月22日 5時22分  
 「左脳がβ波を、右脳がα波やΘ波を出す」という部分は厳密な話ではないので、補足を追加しました。
====
(「脳と音読」(川島隆太・安達忠夫)P176によると、音読などの言語的活動を行うと脳が活性化するそうです。しかし、これは、左脳がβ波が出しているとは言い切れないかもしれません。なお、脳が活性化するということと、音読をすると頭がよくなるということは、関係がないことのように思います。2010/1022追加)
(「脳と音読」によると、空で覚えた文章を音読しているときは脳が活性化せずにリラックスするそうです。しかし、これは、右脳がα波やΘ波を出しているとは言い切れないかもしれません。2010/10/22追加)

コメントフォーム
脳の働きから見た暗唱の仕組み 森川林 20101020 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
むめもや (スパム投稿を防ぐために五十音表の「むめもや」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
暗唱(121) 日本語脳(15) 
コメント1~10件
読解問題の解き Wind
面白かった 10/11
記事 4027番
長文の暗唱のた たろー
この世で一番参考になる 9/30
記事 616番
「桃太郎」を例 匿名
役に立った 8/15
記事 1314番
日本人の対話と 森川林
ヨーロッパの対話は、正反合という弁証法の考え方を前提にしてい 8/6
記事 1226番
日本人の対話と よろしく
日本人は上に都合がよい対話と言う名のいいくるめ、現状維持、そ 8/5
記事 1226番
夢のない子供た 森川林
「宇宙戦艦ヤマトの真実」(豊田有恒)を読んだ。これは面白い。 7/17
記事 5099番
日本人の対話と 森川林
 ディベートは、役に立つと思います。  ただ、相手への共感 7/13
記事 1226番
日本人の対話と RIO
ディベートは方法論なので、それを学ぶ価値はあります。確かに、 7/11
記事 1226番
英語力よりも日 森川林
AIテクノロジーの時代には、英語も、中国語も、つまり外国語の 6/28
記事 5112番
創造発表クラス 森川林
単に、資料を調べて発表するだけの探究学習であれば、AIでもで 6/27
記事 5111番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
標準新演習算数 あかそよ
3の1はできました。 2は、答えを見るとなんとか理解できま 11/23
算数数学掲示板
標準新演習算数 あかそよ
3の1はできました。 2は、答えを見るとなんとか理解できま 11/23
算数数学掲示板
2024年11 森川林
●サーバー移転に伴うトラブル  本当に、いろいろご 11/22
森の掲示板
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習