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読書と対話と暗唱 as/1336.html
森川林 2011/08/23 19:40 
修 削



 読書力には、二つの面があります。ひとつは、読む力、もうひとつは理解する力です。

 小さい子供は、文字を目で見ても理解しにくいので、いったん声に出しその声を耳で聞くことによって、耳から言葉を理解します。これが、幼児期や低学年における音読しながら読む読書です。

 しかし、文字を目で見るだけで理解できるようになると、次第に読む力がつき黙読になってきます。



 ところで、この音読→黙読という読む力のあとに育つのが理解する力です。

 文章とは、もともと現実に存在するものを文章という形で表現したものです(ちょっとややこしい言い方ですが)。

 その文章が表している現実が単純なものであれば、文章を読んだだけですべてが理解できます。しかし、その文章が複雑な現実を表していた場合は、文章を読んだだけでは、理解できないことがあるのです

 そして、学年が上がるにつれて、読む力よりも、この理解する力の方が重要になってきます。



 易しい文章を読むよりも、難しい話を聞く方が考える力がつくのはこのためです。ここに、長文をもとにした家庭での対話の意義があります。

 子供に、難しい文章を読むようにと言っても、言うことを聞く子はまずいません。しかし、子供に、課題の長文を読んでその内容を親に説明してくれるようにと言えば、多くの子は喜んでやると思います。



 さて、難しい文章を理解しようとしているとき、人間の頭の中ではどのようなことが起きているのでしょうか。

 理解とは、いくつかの単語を文法的に組み合わせてひとつの文として理解し、その文を更に組み合わせて文章になったものを総合的に理解するというように積み上げ式に進むものではありません。

 自動翻訳がなかなか進まないのは、このような線形的な発想で文章の翻訳を行おうとしているからです。

 人間の頭の中では、単語や文法よりも、まず文というひとまとまりの現実を理解し、その現実を組み合わせて、より大きな文章という現実を理解するという流れが進行しています。

 つまり、最初に単語の理解があるのではなく、最初に大きなひとまとまりの意味を持つ文の理解があるのです。



 では、この理解力を高める方法はあるのでしょうか。それがあるのです。



 人間の短期記憶は、7つぐらいまでをひとつのまとまりとして把握する力があります。その7つというのは、単語ではなくチャンクというかたまりです。だから、50文字ぐらいの文であれば、一度聞いただけで復唱することができますが、100文字ぐらいになると、一度聞いただけではすぐに復唱することができなくなります。100文字では、チャンクの数が7つを超えてしまうことが多いからです。



 ところが、言葉の森で300字の暗唱をしたり、900字の暗唱をしたりするとき、この短期記憶はどうなっているのでしょうか。

 実は、暗唱した文章においては、チャンクのひとまとまりが大きくなっているようなのです。例えると、普通ではせいぜい10文字ぐらいしか入らないチャンクというバケツのサイズが暗唱によって大きくなり、ひとつのバケツに100文字ぐらいを入れられるようになっているのです。



 暗唱の練習が、文章の理解力を育てるのは、こういう事情があるからです。ただし、大人の場合、暗唱の効果は、理解力よりも発想力が豊かになるという形で表れてくるようです。



 また、これに関連して、家庭での親子の対話も、短い断片的な文ではなく、長い複雑な文として話した方が、子供の理解力が育ちます。

 しかし、そういう対話は、日常生活の中ではなかなか出てきません。日常の対話は、「あれ、とって」「はい、これ」というような短いやりとりで成り立っている場合がほとんどだからです。

 ところが、課題の長文をもとにした対話をすると、自然にそういう長い文章による対話をするようになるのです。



 読書も対話も、ある程度の量をこなすことは大事です。しかし、いちばん大事なのは、その質です。たくさん本を読んで、たくさんお喋りをしたから理解する力や考える力がつくというのではありません。どういう本を読み、どんな話をしたかということが大事なのです。



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