大人は、子供たちの勉強を見て、間違えたところをすぐに直そうとしたり、できなかったところをすぐに理解させようとしたりしがちです。
その気持ちはわかりますが、そういう勉強の仕方をしていると、まず教える人がくたびれてきます。そしてだんだん叱るようになってきます。
次に教えてもらう子の方が最初は真面目に聞いていますが、だんだん気分が乗らなくなってきます。
そして最後に、教える方も、教えてもらう方も疲れ果ててしまい、勉強が続かなくなるのです。
勉強の仕方で最も大事なのは、長続きさせることです。どんなによい教え方をしても、長続きしなかったら、その勉強は身につきません。長続きさせることを再優先して勉強させるというのが、勉強の仕方の鉄則です。
では、長続きさせるためにはどうしたらよいかというと、それはにこやかに見守るだけにするのです。
それでは、できなかったところがいつまでもできないままではないかと思う人もいると思いますが、できなかったことも繰り返しているうちに自然にできるようになるのです。
ただし、そのためには、できなかったところを繰り返し勉強する仕組みを作ることが大切です。
「作文が書けない」「書くことがない」「どう書いていいかわからない」などという質問を体験学習の子供たちから時どき受けます。
そのときに、教える側が真面目になって、書くことを引き出そうといろいろアドバイスをすると、ますます書けなくなります。
書けない原因の第一は、読書不足です。第二は、これまで注意されすぎてきたことです。
だから、アドバイスの方法でいちばんいいのは、口頭でアドリブで書くことを言ってあげることです。
「じゃあ、今から先生が言うとおりに書いてね。『きょう、ぼくはあさ6じにおきました。あさごはんは、なっとうとたまごやきでした。』はい、書いてごらん」
こういう感じで言ってあげると、子供たちは、安心して素直に書き出します。そして、途中から、「なっとうとたまごやきじゃなくて、パンとぎゅうにゅうだったんだけど」などと言いながら自分で書くようになるのです。
書き終えたら、たとえそれがほとんど先生の言ったとおりであっても、褒めてあげて、それでおしまいです。
言葉の森に体験学習に来る生徒の中には、作文が超苦手という人もよくいます。
そういう子供たちが、体験学習の1回めから苦もなく書き出し、やがてどんどん書けるようになり、作文が得意になっていきます。
それは、作文に慣れるように教えているからなのです。
音読も同じです。
国語があまり得意でない子は、つっかえつっかえ読んだり、読み間違えたりします。それを近くで聞いているお母さんが、注意して直そうとすれば、音読はますます苦手になり下手になっていきます。
何も言わずににこやかに聞いていれば、やがて上手に読めるようになります。
これも、慣れです。慣れれば誰でも上手になるものなのです。
勉強も同じです。
算数や数学でできない問題があったとき、教える側はついわかりやすく説明してその場で理解させることがよいことだと思ってしまいます。
しかし、いちばんよいのは、子供が自分で苦労して、「あ、わかった」というわかり方をすることです。
だから、できなかった問題は、少し説明してわからないときは、それ以上説明をせずに、次の日にもう一度同じところをやって、解法と答えを読ませるといいのです。
それを何度か繰り返し、それでもわからないときは、問題と解法と答えを書き写し、それを覚えてしまうぐらいにします。
そうすると、ほとんどの場合、その問題に慣れて自然に理解できるようになります。
それでもどうしてもわからないときは、生徒掲示板に書いて、先生に聞けばいいのです。
音楽や運動は、頭での理解よりも身体の慣れだということをみんな知っています。
知的な理解も大切ですが、そこに使う時間はわずかで、練習量のほとんどは身体が慣れるための時間です。
勉強もそうです。
特に、国語や作文の勉強は、他の教科よりもずっと運動や音楽の習得に近い勉強です。
慣れるためには、いつもにこやかに褒めて、長続きさせていくことが大事なのです。