言葉の森の中学生の作文指導は、文章を読んで意見文を書く形が中心です。題名だけの課題もたまにありますが、ほとんどは文章を読んで書く課題です。
読む対象となる文章は、高校入試の説明文のレベルなので、しっかり読んでいれば自然に語彙力が身につきます。
中学生の3年間で学ぶ構成が高校生以降の小論文の基本で、この書き方ができるようになれば、どういう課題が出ても対応できます。
第一は、一つの意見について複数の理由を述べるという構成です。
第二は、複数の意見を述べて総合化するという構成です。
第三は、一つの意見について複数の方法を述べるという構成です。
この中でも最もわかりにくいのが、複数の意見を述べてそれを総合化してまとめるという書き方です。
複数の意見を述べるというのは、誰でもすぐにできます。問題は、その複数の異なる意見をどうまとめるかということです。
考えずにまとめると、Aの意見もわかる、Bの意見もわかる、だから両方をうまく使い分けて……というようなただの折衷案になってしまいます。
複数の意見を折衷案でまとめずに、より高い次元のCの意見としてまとめるというのが総合化の主題です。
こういう考えは、もちろん大人にも難しいものですから、うまく考えつくときと、どうしても考えつかないときがあります。
また、あるとき考えついた意見が、あとから自分の成長とともにもっといい意見に変わるということもあります。
当然、人によって答えは違いますし、その答えもひとつではありません。
こういう考え方をすることで、抽象的に物事を考える力がついてくるのです。
抽象的に考える初歩の練習は、理由を考えることです。
例えば、意見文で、「○○はよいか悪いか」という題名で書く場合、よいか悪いかの意見は誰でもそれなりに書けます。
その意見の裏付けとなる実例も、多くの人が書けます。
しかし、その実例をより一般化した理由として書くということがなかなかできない人がいるのです。
こういう例もある、ああいう例もある。では、それらの例をまとめてひとことで言うとどうなるかということが出てこないのです。
出てこないものは仕方がありません。そういうときは、いくら考えても出てこないものなのです。
しかし、それは能力がないからではありません。
人間には、もともと抽象的に考える力が備わっています。しかし、それが日常生活の中で必要とされない環境にいるので、磨かれていないだけです。
では、どうしたら、日常生活の中で、抽象的に考えることが必要になる場面が出てくるのでしょうか。
それは、ひとつは親子の会話によって、もうひとつは読書によってです。
つまり、読む力、聞く力が、作文力のもとになっているのです。
作文の欠点を注意しても上手になるわけではないのは、この理由からです。
作文力をつけるのは、作文を直すのではなく、作文を書く土台となる読む力をつけることによってなのです。