人間は、もともと生まれつきよい方向に進みたくなるという性質を持っています。
だから、子育てに失敗したと思うようなことがあっても心配は要りません。
本人がいつか自分で目覚めて、自分の力でよい方向に軌道修正していくようになります。
そう考えれば、子供の成長は安心して見ていることができます。
どんな子供で、その姿の向こう側に、立派に成長した社会人の姿を見ることができるのです。
しかし、だからといって、不要な回り道をする必要はありません。
子供が苦労しなくてもいいように、ある程度の土台を作ってあげるのは親の役割です。
保護者の方から、ときどき「親の言うことを聞かないんです」という相談を受けることがあります。
小学生は、言うことを聞くのが普通です。そうでないのは、小学校の最初の時期に、そういう習慣がついてしまったからです。
小学校の最初の時期は、小学校時代全体を通しての土台が作られる時期です。
この時期に、読書の習慣、家庭学習の習慣、親子の対話の習慣、主体的な遊びと勉強の習慣がつくと、あとは黙っていても、子供は年齢に応じた理想的な成長をしていきます。
何事も、最初のうちに始めれば、それが当然のように抵抗なく進んでいくのです。
しかし、この時期に、ゲームのし過ぎ、読書はしたりしなかったり、学校の宿題があるときだけの勉強、親子の対話よりもテレビ優先、などの生活を始めてしまうと、あとで軌道修正するのは非常に困難になります。
その困難さは、ほとんど不可能と言ってもいぐらいです。
しかし、だからといって、もう手おくれだというのではありません。
それは、最初に書いたように、人間には自分自身で良い方向に復元する力があるからです。
しかし、もちろん、それまでの遠回りは、本当はしなくてもよかったものかもしれません。
だから、小学校の初めの時期に、読書、勉強、遊びのよい習慣をつけておくことはとても大事なことなのです。
ところで、逆に、この時期に親の言うことを聞かせすぎると、また別の問題が出てきます。
それは、主体性の育たない子になる可能性があるということです。
親から見ると、無駄なことをしているように見えても、子供が自分から進んでやる習慣をつけておかないと、学年が上がってからも親がかりの生活から抜け出せなくなります。
もし子供が素直でよい子で、よく親の言うことを聞き、何かあるとすぐに親に相談するという場合は要注意です。
子供はある程度、親の言うことを聞かずに、自分の考えでやって失敗するぐらいでないと、将来自主性のある人間にならないからです。
そして、こういう子供に応じて判断ができ、子供に応じてやり方を変えるという対応ができるのは、やはり親しかいません。
どんな立派な教育者よりも、親がいちばんよく子供の成長の鍵を握っているのです。
言葉の森のオンエア講座の取り組みは、この親子の対話を家庭の文化としていくことを目指したものです。
親と子が、作文の勉強を中心にして、毎週対話をする習慣が作れれば、そういう家庭で育った子は、自分が親になったときも同じように家庭での対話の文化を作っていきます。
そういう家庭生活が、子供の学力と人間力のいちばん確かな土台になるのです。
子供たちは、社会全体の宝です。
よりよい社会を作ることは、よりよい子供たちの教育をすることから始まります。
それは、教育の専門家の仕事ではなく、この社会に暮らす大人全員の仕事です。
その教育の基本は、子供たちがよりよく成長していくことを妨げないようにすることなのです。
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読書、勉強、遊びなど、小学生の保護者の方以外にも参考になる独自の教育論が載っています。
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例えば、子供が小学1年生のころに、食事のときはテレビは消そうねとか、朝ごはんの前に音読しようねとか、返事をするときは「はい」と言おうね、などと決めておけば、どの子も自然にそうするようになり、それが当然のようになります。
しかし、そういう習慣がない子に、小学5年生ぐらいになってから、同じことを言ってもまず素直に言うことは聞きません。
最初にやれば1の力でできることが、あとからやろうとすると、10も20もかかります。
だから、小学生の最初の時期は大切な時期なのですが、同時に、この時期は何もしなくても、あっと言う間に過ぎていく時期でもあるのです。
小学校の初めの時期に、読書、勉強、遊びのよい習慣さえつけておけば、後は多少軌道からはずれることがあっても大丈夫そうですね。実際、みんな、紆余曲折はあっても立派な大人になっていますから(笑)。