ログイン ログアウト 登録
 頭をよくするのは、論理ではなく、難読(難しい文章を読むこと) Onlineスクール言葉の森/公式ホームページ
 
記事 2803番  最新の記事 <前の記事 後の記事> 2024/11/22
頭をよくするのは、論理ではなく、難読(難しい文章を読むこと) as/2803.html
森川林 2017/01/27 07:13 


 論理を学ぶというと、いかにも頭がよくなるような感じがしますが、論理にはそういう力はありません。
 論理の反対にあるのは感覚ですから、論理を学ぶことによって感覚的なものの見方から離れることができるという利点があるのです。論理の役割は、そこまでです。

 論理の典型的な例は、三段論法です。「AがBであり、BがCであるならば、AはCである」というような論理は、見方を変えれば、当たり前の話で、最初からわかっていたことをわざわざ遠回しに言っているようなものです。
 しかし、この論理が、感覚との対比で役に立つこともあります。

 その一つの例は、「変数の数以上の等号の数があれば、その変数は特定できる」などという論理です。
 これは、数学の方程式や因数分解のような論理に似ています。直感的に考えたのでは決して確かとは言えないことが、論理的に考えると確かだ言わざるを得ないというのが論理の特徴です。

 この論理的な考えが実際の役に立つ例として、センター試験国語の勉強があります。
 センター試験の国語は、選択問題で答えが一つの定まっていますから、論理的に考えれば必ず正解に行き当たります。
 国語のテストだから感覚的に考えていいのだと考えると、かえって不正解になるのです。

 論理を学ぶと、世の中はすべて理屈どおりに成り立っているのだということに確信が持てるようになります。
 これが、数学の勉強をする意義です。
 プログラミングの勉強も、こういう論理への確信を持てるようになるという点で意義があります。
 しかし、論理が役立つのは、こういうところまでです。


 論理を学ぶことが頭をよくするわけではないと書きましたが、では、頭をよくするのはどういう学習なのでしょうか。
 それは、「難読」です。難読というのは、ここだけの造語で、難しい文章や本を読むという意味でつかっています。

 私が学生時代、最初にサルトルの「存在と無」を読んだとき、なかなか理解できなかった言葉が、即時存在、対自存在、即自かつ対自存在という3つの概念の区別でした。
 これを自分なりに何度も考えてやっと理解できたときに、ものの味方の新しい地平が開けた気がしたのです。

 こういう時間のかかる読み方を経験すると、速読というのは、表面的な理解には使えるが、深い理解には使えないということがよくわかります。
 速く読む力をつけることは大事ですが、もっと大事なのは深く読む力です。

 このサルトルの即時かつ対自存在という概念のもともとの出どころはヘーゲルでした。
 ヘーゲルは、教科書的な説明では、正反合というわかりやすい考え方でまとめられていることが多いのですが、ヘーゲルの本質はもっと深いものです。それは、物事がその発展の過程で、次第にその物事以外のものを生み出し、それがもともとの物事を否定し、新しい物事が生成されるという世界観です。「精神現象学」には、その具体例が豊富に書かれています。

 頭をよくするのは、論理を学ぶことによってではなく、こういう新しい概念を理解することによってです。

 しかし、小学生の子供に直接難しい本を読ませることはできません。
 だから、子供には、難しい本の代わりに、自然科学の本を読ませるといいのです。人文科学や社会科学は、仮説を述べていることが多いので、確実性のない知識もかなりあります。
 しかし、自然科学は、仮説の部分ももちろんありますが、実際の自然現象として説明できる確実なものが豊富にあります。その自然現象の理解を通して、新しい概念を理解することができるのです。

 自然科学の分野で新しい理解を得たときに、子供は感動します。その感動は、知的な喜びにつながる感動です。
 この感動が更に深く知りたいという知的好奇心を生み、そのことによって更に深い理解をすることで子供の頭はよくなっていくのです。

 だから、頭をよくする子育てで大事なことは、自然を学ぶ機会を作ること、それを難しい本の読書に結びつけることなのです。



同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
科学(5) 

コメント欄

森川林 2017年1月27日 7時20分 1 
 先日、保護者の方から、「論理を勉強した方がいいですか」と質問を受けました。
 論理的にものを考えることは大事ですが、それはわざわざそのために何かをするようなものではありません。
 数学の勉強をしていれば、論理的にものを考えることは自然にできるようになります。
 論理よりも大事なのは、考える力をつけることで、それは難しい本を読むことです。
 しかし、難しい本を読むというのは、小さい子にはまだできないので、その代わりに自然科学を学ぶようにするといいのです。


nane 2017年1月27日 7時26分 1 
 数学の悪口を言うようですが(笑)、数学の勉強をしても頭はよくなりません。数学の成績がよくなるだけです。
 頭がよくなるのは、自分がまだ知らない新しい概念を身につけることによってです。
 その教材が、優れた論説文なのです。


sizuku 2017年1月27日 8時5分 51 
妙に納得してしまいました。
論理的思考という言葉は子育てや教育分野でとても好まれる言葉だと思いますが、論理的思考は役割であって目的ではない。
英語の成績がよくても英語が使えるようにならないのと似ています。

jun 2017年1月27日 9時44分 2 
ボケ防止のためにも難読に挑戦したいと思いました(笑)。

jun 2017年1月27日 9時48分 2 
国語のテストは、感覚的に考えて解けると思ったら大間違いですね。

コメントフォーム
頭をよくするのは、論理ではなく、難読(難しい文章を読むこと) 森川林 20170127 に対するコメント

▼コメントはどなたでも自由にお書きください。
やゆよら (スパム投稿を防ぐために五十音表の「やゆよら」の続く1文字を入れてください。)
 ハンドルネーム又はコード:

 (za=森友メール用コード
 フォームに直接書くよりも、別に書いたものをコピーする方が便利です。
同じカテゴリーの記事
同じカテゴリーの記事は、こちらをごらんください。
科学(5) 
コメント1~10件
読解問題の解き Wind
面白かった 10/11
記事 4027番
長文の暗唱のた たろー
この世で一番参考になる 9/30
記事 616番
「桃太郎」を例 匿名
役に立った 8/15
記事 1314番
日本人の対話と 森川林
ヨーロッパの対話は、正反合という弁証法の考え方を前提にしてい 8/6
記事 1226番
日本人の対話と よろしく
日本人は上に都合がよい対話と言う名のいいくるめ、現状維持、そ 8/5
記事 1226番
夢のない子供た 森川林
「宇宙戦艦ヤマトの真実」(豊田有恒)を読んだ。これは面白い。 7/17
記事 5099番
日本人の対話と 森川林
 ディベートは、役に立つと思います。  ただ、相手への共感 7/13
記事 1226番
日本人の対話と RIO
ディベートは方法論なので、それを学ぶ価値はあります。確かに、 7/11
記事 1226番
英語力よりも日 森川林
AIテクノロジーの時代には、英語も、中国語も、つまり外国語の 6/28
記事 5112番
創造発表クラス 森川林
単に、資料を調べて発表するだけの探究学習であれば、AIでもで 6/27
記事 5111番
……次のコメント

掲示板の記事1~10件
2024年11 森川林
●サーバー移転に伴うトラブル  本当に、いろいろご 11/22
森の掲示板
現在森リンベス 森川林
このあとの予定。 ・森リンベストを直す(直した) ・森リ 11/20
森川林日記
Re: 入会手 言葉の森事務局
 お世話になっております。  弟さんのみご入会が1週間 11/15
森の掲示板
入会手続きにつ やすひろ
お世話になっております。 個別掲示板を開けませんので、ここ 11/15
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Mr. 1
1 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板
Re: 項目の 1
> いつもありがとうございます。 > > こすほ 11/14
森の掲示板

RSS
RSSフィード

QRコード


小・中・高生の作文
小・中・高生の作文

主な記事リンク
主な記事リンク

通学できる作文教室
森林プロジェクトの
作文教室


リンク集
できた君の算数クラブ
代表プロフィール
Zoomサインイン






小学生、中学生、高校生の作文
小学1年生の作文(9) 小学2年生の作文(38) 小学3年生の作文(22) 小学4年生の作文(55)
小学5年生の作文(100) 小学6年生の作文(281) 中学1年生の作文(174) 中学2年生の作文(100)
中学3年生の作文(71) 高校1年生の作文(68) 高校2年生の作文(30) 高校3年生の作文(8)
手書きの作文と講評はここには掲載していません。続きは「作文の丘から」をごらんください。

主な記事リンク
 言葉の森がこれまでに掲載した主な記事のリンクです。
●小1から始める作文と読書
●本当の国語力は作文でつく
●志望校別の受験作文対策

●作文講師の資格を取るには
●国語の勉強法
●父母の声(1)

●学年別作文読書感想文の書き方
●受験作文コース(言葉の森新聞の記事より)
●国語の勉強法(言葉の森新聞の記事より)

●中学受験作文の解説集
●高校受験作文の解説集
●大学受験作文の解説集

●小1からの作文で親子の対話
●絵で見る言葉の森の勉強
●小学1年生の作文

●読書感想文の書き方
●作文教室 比較のための10の基準
●国語力読解力をつける作文の勉強法

●小1から始める楽しい作文――成績をよくするよりも頭をよくすることが勉強の基本
●中学受験国語対策
●父母の声(2)

●最も大事な子供時代の教育――どこに費用と時間をかけるか
●入試の作文・小論文対策
●父母の声(3)

●公立中高一貫校の作文合格対策
●電話通信だから密度濃い作文指導
●作文通信講座の比較―通学教室より続けやすい言葉の森の作文通信

●子や孫に教えられる作文講師資格
●作文教室、比較のための7つの基準
●国語力は低学年の勉強法で決まる

●言葉の森の作文で全教科の学力も
●帰国子女の日本語学習は作文から
●いろいろな質問に答えて

●大切なのは国語力 小学1年生からスタートできる作文と国語の通信教育
●作文教室言葉の森の批評記事を読んで
●父母の声

●言葉の森のオンライン教育関連記事
●作文の通信教育の教材比較 その1
●作文の勉強は毎週やることで力がつく

●国語力をつけるなら読解と作文の学習で
●中高一貫校の作文試験に対応
●作文の通信教育の教材比較 その2

●200字作文の受験作文対策
●受験作文コースの保護者アンケート
●森リンで10人中9人が作文力アップ

●コロナ休校対応 午前中クラス
●国語読解クラスの無料体験学習