子育ては、傍から見ていると簡単そうに見えます。しかし、当事者はなかなか大変です。
それは、「馬を水辺に連れていくことはできるが、水を飲ませることはできない」ということを日々実感しているからです。
確かに、子供がごく小さいころは、無理矢理にでも水を飲ませてしまうことができなくはありません。
しかし、そういう時期はほんのわずかです。
難しくなるのは、子供に自立心が出てくるころからです。
子供の自立心と自律心を育てながら、親の望む方向に導くためには、ある程度のコツが必要です。
しかし、誰にとっても親となるのは初めての経験で、子育ては初心者ですから、初めはうまく行かないのが当然です。
昔は、それが祖父母や地域の集団活動の中で自然に伝えられてきた面がありました。
今は、孤独な母親がひとりで試行錯誤をしながら子育てをしているのが現状に近いと思います。
子供の学力は、学校や塾や習い事の中で育つのではなく、基本的に家庭の中で育ちます。
そういう子育てのいろいろなコツを、保護者どうしのコミュニケーションの中で伝えていけたらいいと思っています。
言葉の森の作文指導も、教育における家庭の関わりを生かす形で進めていく予定です。
その一環として、今後、自主学習クラスや思考発表クラブやオンライン作文で、保護者との面談や懇談の時間を定期的に確保していく仕組みを作っていこうと思っています。
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「勉強は追加すればだらだらやるようになり、早めに終えれば集中力がつくようになる」
https://www.mori7.com/index.php?e=2111
勉強が予定よりも早く終わると、親はつい、
「そんなに早く終わるのだったら、もう少しほかのこともやっておこう」
と言ってしまいます。ところが、それがよくないのです。
子供は、自分なりに、与えられた課題を早く仕上げて、お母さんに褒めてもらいたい、又は、早く勉強を終えて遊びに行きたいと思っています。
ところが、早く終わったことによって、その早く終わったことに対する罰であるかのように、新しい勉強が追加されるのですからたまりません(笑)。
そういう勉強の追加をやると、子供はそれからだらだら勉強するようになります。早く終えない方が得だということを学習してしまうからです。
犬の躾にも、似たようなところがあります。広いところで犬を放して遊ばせたあと、「おいで」と言ってもなかなか戻ってこないことがあります。何度呼んでも戻ってこないので、やっと戻ってきたときに、飼主は犬を叱ってしまうのです。
「どうして早く戻ってこなかったの。ゴツン」
すると、犬は、戻ってくると叱られるのだということを学習してしまいます。その結果、ますます戻ってこない犬になるのです。
どうしたらいいかというと、自分の都合で考えるのではなく、相手の立場になって考えるということです。それは、相手が自分よりも弱い立場にいるときほど必要なことです。
しかし、こういう間違いは、多かれ少なかれ誰でもしています。だから、そういう失敗を経験した人が、そのあとの人にその経験を伝えていけばいいのです。昔は、その伝える役割を大家族の中で祖父母が行っていました。これからは、地域あるいはネットの中で父母どうしが子育ての共有をするようになっていくと思います。
では、勉強が予定よりも早く終わったらどうしたらいいのでしょうか。
その前に、勉強は時間でやるのではなく、分量でやらせることが大事です。「○分の勉強」ではなく、「○ページの勉強」というように目標を決めるのです。
その「○ページの勉強」が見積もりよりもかなり早く終わった場合、親は、「わあ、すごい。早く終わったね」と喜んでおしまいにしておくのです。
そうするうちに、だんだんと、その子の実力に応じた分量がわかってきます。しかし、その場合でも、目一杯の分量ではやらせずに、少しものたりないぐらいの分量で続けていくことが大切です。
少なめの分量であれば、子供は自分で勉強の仕方をコントロールすることができます。時間で決められたり、多すぎる分量を与えられたりすると、自分で自分の勉強をコントロールできなくなります。
このコントロールする力が自律心です。
犬の躾の場合は、別に書かなくてもいいかとも思いますが(笑)、犬に長いリードをつけて遊ばせます。そして、「戻っておいで」と言いながら、リードを少しずつ引っ張ります。そうすると、犬は当然引っ張られて戻ってきます。そこで、「えらい、えらい」と褒めてやるのです。
できなかったことを叱るよりも、できるようにさせてできたことを褒めるのがコツです。
しかし、ここでもう一つ大事なコツがあります。
それは、叱るときには、ごくたまに厳しく叱ることです。いざというときには厳しいということがわかっているから、優しく褒められたときに嬉しくなるのです。
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