数学者の岡潔さんは、普段は自分の好きな勉強だけをしていて、定期テストの直前になると出題範囲の問題を全部覚えて試験に臨んだそうです。
これが勉強の理想の姿だと思います。
自分の好きなことと、試験に合格することを両立させるには、今はこういう方法しかありません。
そして、この方法が結構うまく行くのです。
この反対の方法が、試験のずっと前から、試験に合わせた勉強をしていくことです。
そのために、自分の好きなことはとりあえず後回しにして、勉強時間のほとんどを試験勉強のために充ててしまうというやり方です。
こういうやり方をすれば、確かに試験の点数はよくなります。
しかし、同時に、こういう勉強をしている子は、決して勉強好きにはなりません
その結果、どうなるかというと、大学合格がゴールになり、無事にゴールまで行ったあとは、もう勉強をしようという気がなくなるのです。
ところが、人間が本格的に知的に成長するのは、18歳以降です。
そして、その知的な成長が20代、30代、40代とずっと続いていくのです。
だから、子供の勉強を考える場合、今の点数をよくすることと同時に、もっと重要な将来勉強好きになるような勉強のさせかたをしていくことが大事になると思います。
▽関連記事
「明日の教育と今日の教育を両立させる勉強を――はせくらみゆきさんの「チェンジ・マネー」を読んで」より
https://www.mori7.com/index.php?e=2806
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近い未来に、こういう世の中が来るだろうことを、私は確信していますが、しかし同時に、まだこのような社会になっていない現在でも、人間は生きていかなければなりません。
明日よりよく生きると同時に、今もよりよく生きるという両方の選択をするのが現代という過渡期の時代なのです。
それは、具体的には、喜ばれるために仕事をすると同時に、勝つために仕事をするということです。
子供の勉強に関して言えば、創造と共感の人間らしい生き方をするために勉強をすると同時に、当面の受験を頂点とする試験教育に勝つために勉強をする必要もあるということです。
この二つの水と油のような教育を両立させることは、私は十分に可能なことだと思っています。
そのひとつの例が、数学者の岡潔さんのような勉強法です。岡さんは、学生時代、普段は自分の好きな勉強を楽しむためにやっていましたが、定期試験の前だけは短期間でその試験の出題範囲を全部覚えて好成績を上げていたそうです。
創造的な仕事をしている人に、こういう勉強法をしている人は多いと思います。
この正反対の勉強法が、普段から自分のあまり興味の持てない勉強を、苦しいのを我慢しながら早めに取り組んで、試験のためだけの勉強を長時間続けることです。
これは、今日の勉強のために、未来の勉強を犠牲にしていることと同じです。
未来の勉強のために、今日の勉強を犠牲にすることもいいことではありませんが、今日のために未来を犠牲にすることはもっと決定的によくないことです。
最近の学習塾で行っている英語教育の中には、小1から英語の学習を始めて小2か小3のころまでに英検2級を取るというようなスケジュールのコースがあるそうです。そのために、家庭での保護者の協力による宿題が大量に出るのです。
子供が自分で選んだわけではもちろんありません。親がよかれと思ってやっていることですが、この子たちが数年後、肝心の日本語がうまく使えるようになっているかどうかはわかりません。日本語だけでなく、肝心の自由な遊びの時間なども制限されるでしょう。
こういう勉強が、今日のために明日を犠牲にしている勉強です。
普通の賢い母親は、小学校低学年のうちから子供を勉強漬けにするようなことはしません。しかし、自由放任で遊び放題というのでもありません。
低学年のうちは、いつも言っていることですが、読書と対話と遊びと、自主的な勉強習慣をつけることを目標にしていくことです。そして、勉強は決して長時間やらせたり、難しいものをやらせたりするのではなく、基礎的な1冊を反復するという形で進めていくことです。
平凡なことですが、これが、未来と今日を両立させる勉強の仕方です。
そして、これもいつも言っていることですが、そのために、作文を勉強の中心として、読書と対話と遊びと日々の勉強を回転させていくのです。言葉の森では、そういう勉強の仕方をしている人がかなりいると思っています。
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