発表学習クラスのミニ懇談会で、「作文を漢字を使わずにひらがなばかりで書いている」という相談がありました。
これは、男の子には特によくあることです。
漢字を使わずにひらがなばかりで書くというのは、とても目立つことなので誰でも直したくなります。
また、漢字を書ける大人にとってみれば、漢字を使うことなど心掛け次第でわけなくできることのように思いがちです。
ところが、これがなかなか直らないのです。
漢字を書かない子というのは、ほかのことがすべてできて、漢字を書かないところだけができないというのではなく、ほかのことでもできていないことが結構あります。
だから、直すことにかなり力を入れなければできないような漢字を書かせることに力を入れるよりも、もっと大事な学力の中心である読書に力を入れるということを最優先してやっていくのがいいのです。
そして、漢字を書くことについては、すぐには直らないものの、毎回、「なるべく漢字を使って書いた方が見た目がよくなるよ」ということを優しく繰り返し言ってあげるのです。
繰り返し同じことを聞かされることによって、子供はだんだんと、なるべく漢字で書こうという気持ちを持つようになります。
そして、本当に少しずつ漢字を書く割合が増えてくるのです。
これを、一挙に漢字を書くようにさせるというのは無理があります。
少しずつ漢字を書くように仕向けていくことが最善の方法で、そして漢字とは一見関係がないように見える、しかし学力の中心となる読書に最重点を置いていくようにするといいのです。
また、普段の作文はひらがなばかりで書いていたとしても、清書のときだけは、使える漢字は漢字で書くというふうにするやり方もできます。
年中漢字を使うのは無理としても、焦点を絞って漢字を使うというのであれば、子供はそれなりに納得して取り組むからです。
漢字を使えないことによるいちばんの問題は、間違えたまま覚えている漢字がわからないということです。
これは、大人になってからでも、小学校中高学年で習ったはずの漢字を正しく書けない人がかなりいることを見ても分かります。
漢字の書き取り力は、真面目に勉強しているかどうかということに比例するので、漢字を正しく書ける人は真面目に勉強した人です。
漢字を正しく書けない人は、真面目に勉強していなかった人で、男の子のほとんどは、真面目に勉強していなかった方に入ります(笑)。
小学校時代に、真面目に漢字の勉強をするというのは、よほど親がしっかりやらせないかぎり、決して自然にできることではないからです。
漢字の書き取り力は、学力とは全く関係なく、ただ真面目に勉強したかどうかだけなのです。
さて、話は先に進みますが、ひらがなを漢字に直す場合、辞書を引くというやり方はこれからはなくなっていくと思います。
大人の場合は、キーボードで打って漢字変換をして確かめるというやり方をしている人がほとんどだと思います。
今後、もっと広がるやり方は、音声入力で漢字変換を自動的に行うことです。
更に先に進めば、アマゾンエコーやグーグルホームというロボットのようなものを横に置いて、「この漢字どうやって書くんだっけ」「コウデスヨ」というような時代になると思います。
そして、人工知能を使った手書き認識の時代になれば、ひらがなで書いた文字も自然に正しい漢字に直るようになります。
そう考えると、漢字が正しく書けるかどうかというのは、今の時点でこそその人の教養を測る尺度のようなものになっていますが、近い将来は、評価としてほとんど考慮されないものになってくると思います。
ところが、では、漢字を勉強しなくていいかというと、ここで大逆転があるのです(笑)。
それは、漢字、ひらがな、アルファベットなどを比較した場合、漢字だけは、同じ文字でも画像的な文字として認識されているからです。
だから、漢字の書き取りはほどほどでもよいが、読み取りだけは学校で勉強する以上に進めていくのがいいのです。