暗唱は、作文力を高め、思考力を深めます。
その暗唱について、三つの話をします。
第一は、暗唱のコツです。
よく、若いときでないと暗唱できないとか、小さい子の方がよく暗唱できるとか言いますが、その差は年齢にあるのではありません。
暗唱というものの考え方にあるのです。
小さい子は、音読を繰り返すので、すぐに暗唱できるようになります。
学年が上がり、知識がついてくると、文章を覚えようとしてしまうのです。
覚えるということは、思い出そうとすることです。すると、思い出すことが癖になり、暗唱の練習ではなく思い出す練習になってしまうのです。
暗唱というのは、最初の一読目が大事です。
一回目の読みで読み間違えると、その読み間違いが癖になり、いつもその箇所で読み間違いをするようになります。インプリンティングというものに似ています。
だから、最初はゆっくりていねいに、読み間違いがないように読んでいく必要があるのです。
しかし、間違いなく正確に読めるようになったら、今度はできるだけ速く読むようにするのです。
人間の理解力はかなりスピードがあります。どんなに速く読んでも、内容についていけないということはありません。
そして、できるだけ速く読むことによって、文章が一文一文のつながりでなく、まるごと一つながりのものとして頭に入ってくるのです。
こうなると、道を歩いていて、ふとそのフレーズが頭に浮かぶということも出てきます。作文を書くときも、自然にいいリズムがやいい表現が思い浮かぶというようになるのです。
それは、ただ表現が思い浮かぶということだけではありません。その文章の考え方やものの見方も同時に思い浮かぶのです。
暗唱によって、作文力も思考力もつくというのは、こういう理由からです。
このできるだけ速く読むというのは、特に百人一首の暗唱のときなどに必要になります。
というのは、かなり多くの生徒が、この百人一首の暗唱でつまずいているからです。
そのつまずきのいちばんの要因は、次の句を思い出そうとすることにあります。
暗唱とは、覚えたり思い出したりすることではなく、繰り返し音読することだという点をしっかり確認して取り組む必要があります。
そのできるだけ速く読むということについて、とても参考になる作文があったので、紹介します。
小学5年生の作文の一部です。
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僕は、繰り返すことに時間をかけたことがある。それは、暗唱だ。最初は、「雨二モマケズ」を繰り返し読んでいるうちに覚えてしまった。なぜ始めたのかというと暗唱検定ができたからと、覚えるのが楽しかったからだ。
難しい言葉もあるが、つながった文章のものは、まるで早口言葉のように読んで覚えていった。むしろ早口の方がいい。百人一首は、一句一句につながりないため覚えきれないで苦戦した。どうしたら上手く覚えられるかしばらく考えて、いい案を思いついた。百人一首には一句一句つながりがないから句と句の間で息継ぎせずに句の途中で息継ぎをするようにした。すると全部を暗唱することができた。
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朗読と暗唱は、似ているが違うものです。
朗読を繰り返しているうちに暗唱ができるようになるというのは、かなり時間がかかります。
しかし、覚えることと暗唱することも、似ているが違うものです。
暗唱とは、ただ早口で繰り返し音読することです。
そして、その文章がまるごと自分のものになってから、ゆっくり味わうという読み方をしていくといいのです。
言葉の森の暗唱練習の特徴は、説明文の古典も含めた高度な暗唱文が多いこと、暗唱検定という目標があること、少人数クラスで暗唱ができるので楽に続けられること、暗唱の手順や方法がはっきりしていることにあります。それに加えて、今後は小4以上の英語暗唱にも力を入れていきたいと思っています。中学生で英語の知識的な勉強を始めるまえに、小4からまるごと英語の文章を覚えてしまうようにするのです。